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【社会】

超大型望遠鏡、建設見通せず ハワイ島 先住民の聖地、反発根強く

超大型望遠鏡TMTの想像図=TMT国際天文台提供

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 日本など五カ国が米ハワイ島で計画する超大型望遠鏡「TMT」の建設が難航している。予定地のマウナケア山頂は先住民の聖地で、建設はこれまでも反対運動や訴訟により中断。七月中旬には再開を図ったが反対派も運動を再燃させ、山頂への道路を封鎖している。チームは引き続きハワイでの建設を目指す一方、大西洋の島に代替用地も確保する方向。望遠鏡の行方は不透明なままだ。

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■日本など5カ国

 TMTは「三十メートル望遠鏡」の頭文字。世界最高レベルの集光力と解像度を実現する直径三十メートルの主鏡を持ち、宇宙で最初に生まれた星や、太陽系外で生命が住める惑星などの探索が期待されている。

 標高約四千メートルの予定地付近は天気の安定した屈指の好立地で、既に十三基の天文台が並ぶ。だが周辺は先住民にとって「生命の起源の場」。一部住民には環境破壊、さらには聖地の侵害と映った。

 二〇二二年の完成を目指し一四年に始まったTMTの工事は反発を受け中断。翌年には州政府が出した建設許可が裁判所で無効とされ、再び許可が出たのは昨年のことだ。

■競合欧米は着工

 今年七月、チームがようやく工事再開を表明すると、反対運動が活発化。「絶対造らせない」として頂上への道路を封鎖し、日本のすばる望遠鏡など既存施設へのアクセスも制限された。ハワイ出身の俳優や州議会議員が反対運動を応援。一方でイゲ州知事は一時、非常事態を宣言し、雇用や経済効果を期待する賛成派のデモも起きるなど、混乱と分断が深まった。

 ハワイの社会に詳しい沖縄キリスト教学院大の崎原千尋特任講師は、問題の背景に西洋人による先住民文化の抑圧の歴史があるとみる。一九七〇年前後の文化復興運動に関わった人々の後継世代が育って今回の反対運動を担い、「ずさんな聖地管理はもうだめだ、と声を上げた」と指摘する。

 チームが懸念するのは、この状態が続き、観測成果が出せない事態だ。完成は既に五年繰り下げの見込み。さらに南米では欧米の次世代望遠鏡が着工し、ライバルとの差もじりじり広がる。

■大西洋に代替地

 チームは二〇一六年、ハワイに建設できない場合に備え、スペイン領カナリア諸島のラパルマ島を代替地に選定。今年に入り建設許可も申請した。八月、スペイン側も前向きと報道されると、ハワイの反対派は「全員の勝利だ」と歓迎の声を上げた。

 ただ、ラパルマの代替地は標高約二千メートルと低い。大気が濃いと宇宙からの光がゆがみ、高精度の観測が難しくなるデメリットがあり、チームは依然、ハワイにこだわる。

 現地の報道機関の調査では建設支持が六割。国立天文台の岩田生副プロジェクト長は「理解は広がっている。事態が収まれば、すぐに工事を進めたい」と話す。

 だが運動の収束は見通せていない。崎原さんは「マウナケアは土地というよりアイデンティティーの一部。ハワイアンは諦めないだろう」と話した。

超大型望遠鏡TMTの建設が予定されるマウナケア山の麓で道路を封鎖する反対派=7月15日、米ハワイ島で(AP・共同)

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