東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

新学期 法律が守ってくれるよ いじめ体験の男性“こども六法”あす出版

「こども六法」を手にする山崎さん=東京都千代田区で(木口慎子撮影)

写真

 小学生のときに同級生からいじめを受け、中学で出合った刑法でそれが犯罪だと知ったことがきっかけで法教育研究者になった山崎(やまさき)聡一郎さん(25)=東京都板橋区=が二十日、子どもに関係の深い法律を分かりやすく解説した「こども六法」(弘文堂)を出版する。いじめに苦しみ、夏休み明けが気が重い子どもたちへ「勇気を出して周りの大人に訴えてほしい。法律が力になる」と呼び掛ける。 (小形佳奈)

 「人を殴ったり物を奪ったりすれば、法律に従って罰せられる。加害者が子どもでも同じです」。山崎さんが著書を手に語る。

 六法のうち子どもにかかわりが薄い商法を外し、少年法、いじめ防止対策推進法を加えた七つの法律の条文を掲載。特に重要と思われる条文は「みんなと違っていてもいい」(憲法一九条、思想、良心の自由)、「ケガをさせなくても暴行になるよ」(刑法二〇八条、暴行)とかみくだいた要約とイラストを添えた。

 山崎さんはさいたま市で育った。小学五年生の二学期、同級生にいじめられていたクラスメートをかばったことで自分が標的となった。すれ違いざまに腹を殴られたり、「死ね」と言われたりした。下校中に後ろから蹴られて転び、手首を骨折したこともあった。

 両親は学校や教育委員会に訴えたが、学校はいじめを認めなかった。いじめから逃れるため学区の異なる公立中学への進学を希望したが、それも許可されず、都内の私立中学に進んだ。

 その中学の図書館で、六法を手にした。「○×罪で逮捕、というニュースを見るたびに、憲法には罪名が書いていないのに、何を根拠に逮捕されるのか疑問に思っていた」。刑法の条文を読んで衝撃を受けた。暴行、誹謗(ひぼう)中傷…。自分が受けたいじめは犯罪だったと気付いた。

 「小学校で基本的人権は教わったけど、それが侵害されたときにどう主張するのか、誰も教えてくれなかった」

 高校卒業後、慶応大学総合政策学部、一橋大大学院社会学研究科で「法教育といじめ問題解決」をテーマに研究した。二〇一四年に自費出版した「こども六法」が弘文堂編集部の外山(とやま)千尋さん(56)の目に留まり、今回、大幅に作り直して出版されることになった。

 「分かりやすく、かつ、法解釈的に間違いないように解説することに最も心を砕いた」と山崎さん。出版に当たり、大学の恩師や法教育の学会所属の専門家が無償で監修してくれた。

 かつて自分を苦しめた同級生を罪に問う気はなく、「今、困っている子どもたちのために時間を使いたい」という。巻末では、いじめで壊された物やメールの文面などを証拠として残しておくことを勧め、「きみはけっして悪くありません。信頼できる大人に相談して」などと結んだ。

 A5判二百二ページ、千二百九十六円(税込み)。小学校高学年から高校生向けだが、山崎さんは「保護者や先生にも読んでもらいたい」と話している。

子どもたちに分かりやすいよう一部の条文には要約とイラストを添えた=弘文堂提供

写真

子どもたちに分かりやすいよう一部の条文には要約とイラストを添えた=弘文堂提供

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報