東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

優しい農業 追い続けて 肥料なしの自然栽培・できた野菜から採種 

明石誠一さん(右)と原村政樹監督=埼玉県三芳町で

写真

 東京都板橋区から移住して就農した埼玉県三芳町の明石誠一さん(44)が、野菜の自家採種・自然栽培に取り組む姿を追ったドキュメンタリー映画「お百姓さんになりたい」=原村政樹監督(62)=が二十四日、東京・ポレポレ東中野を皮切りに全国で順次公開される。人や自然の多様性を尊重して土と向き合い、今後の農業や共生社会の在り方を示している。 (中里宏)

 就農から十六年。わずか四百平方メートルほどの畑から始めたが、今では十六カ所計二・八ヘクタールの明石農園へと拡大。障害者を含む多くの仲間が六十種の野菜作りに取り組む。

 明石さんは、会社員などで働くうちに「農家になりたい」という小学生時代の夢を思い出した。北海道や埼玉県富士見市などの農家で研修し、二十八歳の時に三芳町で就農した。

 当初は魚粉やおからを肥料に使う無農薬有機農法だった。次第に「永続的な循環とは何か」を考え、五年後には、畑の雑草や使わない野菜の葉などを緑肥として土にすき込む以外、肥料さえ施さない「自然栽培」に転換。試行錯誤を繰り返し、できた野菜から種採りもする。「種があって土があれば、何も買わなくても食べ物が作れる。子どもたちがずっと食べ物を享受できる」と話す。

 常時、就農を目指す人たちを研修生として受け入れ、これまでに十人が独立。肢体不自由児や知的障害児の母親たちのグループとの交流も続け、障害者の就労も受け入れる。「いろいろな違いのある人たちの接着剤になるのも農業の役割の一つ」と明石さん。雑木林を会場にした「林で演奏会」も主宰し「農」のある暮らしを共通項にしたコミュニティーづくりを目指す。

 原村監督は約三十年にわたり、農業をテーマにした映画やテレビ番組を撮り続け、農業ジャーナリスト賞を二度受賞。三芳町を中心に江戸時代から続く落ち葉堆肥農法を追った前作「武蔵野」(二〇一七年)の取材中に明石さんと知り合い、昨年十一月まで約一年半かけ、明石農園の撮影を続けた。

写真

 国連は一九〜二八年を「家族農業の十年」と定め、世界の食料生産額の八割以上を占める家族農業に関する施策の推進や知見の共有を求めている。一方、日本では政策的に担い手の企業化、農業の大規模化を奨励する。

 原村監督は「世界的に家族農業の価値が見直されている中、残念ながら日本は逆行している」と指摘。明石農園の取り組みについて「ミクロの世界だが、実は共生社会の在り方など大きなテーマを提示している。ぜひ若い人に見てもらいたい」と話している。

 ポレポレ東中野での上映は九月まで(終了日未定)。埼玉県川越市の川越スカラ座では十月二十二日〜十一月八日。沖縄県や大阪府での上映も決まっている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報