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【社会】

横浜市、カジノ誘致すべき?

 横浜市の林文子市長がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を表明し、カジノの是非を巡る議論が続いている。首都圏では東京や千葉も検討を進めているが、そもそも民間事業者が収益の七割を得る仕組みの「公益性」を疑問視する声は根強い。ギャンブル依存症や治安悪化への懸念から、市民の反発も強まっている。地域の未来像をどう描くのか。三日に横浜市の定例議会が始まるのを前に、横浜の地域振興に携わってきた賛否双方の論者に聞いた。 (杉戸祐子)

◆観光のシンボルに 横浜商工会議所・福田政也氏(54)

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 横浜は東京に近い分、企業の本社が少なくて法人税収が少ない。「支店経済」とも言われ、商議所としては、自立した経済を確立するには新たな産業の柱が欲しい。期待されるのは観光産業。今は日帰り客が多く、宿泊客が少ない。オーストラリアのオペラハウスやシンガポールのマーライオンのようにシンボリックな施設が足りないし、夜遊べる場所もない。

 その対策としてIR誘致は最も有効。エンターテインメント施設を楽しみながら宿泊してもらえば消費が増える。IRの中で楽しむのはもちろん、近くの中華街に行こうとか、元町商店街を散歩しようかとか、地域全体が活性化する。IRは基本的に相当ラグジュアリー(ぜいたく)な施設なので、既存のホテルなどとは差別化が図れるし、むしろ相乗効果が期待できる。

 世界的に見て、すべてのカジノ施設が成功しているわけではないが、シンガポールでは依存症対策をしっかり行った結果、依存症になる割合が下がったというデータがある。商議所メンバーで、カジノのあるオーストラリア・メルボルンを見学に行ったが、治安が悪い印象はなかった。しっかりと依存症対策をとり、厳しい規制と警備をすれば治安が良くなることはあっても悪くなることはない。心配することはない。

 横浜は何もない港町から発展してきた進取の精神の街。新しいものを積極的に取り入れないとイノベーションが起こらず、街も発展しない。リスクが全くないとは言えないが、成功すれば大きく発展できる。チャレンジしていくべきだし、横浜は実際にそうやって発展してきた街だ。

<ふくだ・まさや> 1988年、横浜商工会議所に入所。以来、事務局を担当し、現在は企画広報部長兼都市政策担当課長。

◆街の品格下げるな 横浜市元技監・森誠一郎氏(74)

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 街の品格をどう考えているのか。賭博(とばく)の上がりを元手に経済を発展させるという考え自体が不健全だ。政治、行政をつかさどる立場で、カジノで負けた人の財布を当てにする精神構造は理解に苦しむ。

 市職員として長年、みなとみらい21(MM)地区の都市計画に携わった。MMができる前の横浜は東京に勤める人のねぐら。人口は増えていたが、このままベッドタウンになっていいのかと考えた。オフィスや商業施設、住宅、文化施設など土地利用のバランスを検討し、基本は就業の場だが、国際会議場や美術館など多様な都市施設が整然と混在する街を目指した。

 MMの中心部はマージャンやパチンコ、馬券売り場などを建築してはならないと定めた。建物の高さや色彩などは議論になったが、賭博に関する規制は地主、開発者など誰からも反対はなかった。将来にわたって堅実によい街をつくると一致していた。確実にプランした街に近づきつつある。

 どの街も品格は先人が営々として築き上げてきたもの。人間の信頼関係と同じで築くには時間がかかるが、なくす時は一瞬だ。そもそもカジノは横浜だけでなく、日本としてもやってはいけない話。国内にはすでに公営ギャンブルやパチンコがあり、依存症の問題も深刻だ。カジノ抜きの街づくりを考えるべきだ。

 少子高齢化は避けられないとしても、居住人口や就業人口を増やす取り組みが大切。待機児童対策のように女性が働きやすく、子育てしやすい政策を地道に考えること。「安心して住める」「ここで働きたい」と思ってもらうための不断の努力こそ求められている。

<もり・せいいちろう> 1970年入庁。みなとみらい21担当部長、道路局長などを歴任。現在は建設コンサルタント会社に勤務。

<IR誘致を巡る動き> 2016年12月にカジノ解禁に向けたIR整備推進法が成立。18年7月に実施法も成立し、国が最大3カ所の開設区域を選定するとした。政府は20年代半ば以降の開業を目指す。横浜市のほか、すでに大阪府・市、和歌山、長崎両県が誘致を表明している。横浜市が昨年実施したパブリックコメントではIRに関する意見(433件)の94%は否定的意見だった。

 

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