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【社会】

京急脱線「ぶつかる」「逃げろ」 警笛、悲鳴乗客パニック

救護される乗客ら=5日午後1時22分、横浜市神奈川区で

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 鳴り響く警笛、直後に激しい衝突音。そして車内は大混乱に陥った−。横浜市神奈川区の京急線踏切で五日、大型トラックと衝突、脱線した快特電車の先頭車両にいた乗客は、衝突直前に危険に気付いた。「後ろに逃げろ」「やばい」。叫び声が響き渡る車内で衝突までの恐怖を、青ざめた表情で振り返った。 (藤川大樹、丸山耀平)

 「電車がかなりの速度で飛ばしている時に、プーーーッという警笛が鳴り響いた」。横浜市港南区の会社員、渡辺力さん(63)は、先頭車両で進行方向の左側のシートに座っていた。

 警笛は十数秒続いたように感じ、車両前方にいた乗客らが「ぶつかる」「後ろに逃げろ」と叫びながら、後ろの方へ走ってきた。渡辺さんは思わず座席の脇にある手すりにつかまった。

 「ギャー」。次の瞬間、悲鳴が上がり、続いて衝突音が来た。「ドーンッというか、聞いたことのない、めちゃめちゃな音だった」。渡辺さんの体も前方に投げ出された。

 先頭車両は脱線の影響で右側に傾き、立っていられない状況に。渡辺さんは四つんばいで車両後方へ向かい、亀裂の入った連結部分から脱出した。衝突から五分足らずだったという。

 同じく先頭車両にいた東京都大田区の無職男性(72)は「ぶつかった瞬間、向かいの座席まで飛ばされた。みんなパニックになった様子で、叫びながら車両の後ろまで下がっていった。こりゃやばい、終わりかなと思った」と声を震わせた。

 四両目付近に乗っていた横浜市瀬谷区の会社員太田翔さん(23)も「電車が浮いた。死ぬかと思った」と話す。衝突後、外に出ると先頭車両の方で黒煙が上がり、焦げた臭いがした。乗客が線路上で一斉にスマホで写真を撮ろうとしたため、駅員が「トラックが爆発する恐れがあるので急いで避難してください」と叫び、駅の方へ誘導した。

京浜急行の電車とトラックが衝突し、黒煙の上がる事故現場=5日(乗客撮影)

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◆現場近く「ドーン」地響き

 立ち上る黒煙の中、赤い先頭車両が線路上で大きく傾いていた。事故のけが人は三十四人に上り、衝突直後の現場には複数の救急車と消防車が駆けつけて騒然とした。

 現場付近の線路脇の鉄柱には、大きく折れ曲がったものも。車の積み荷だったレモンなどの果物が広範囲に多数散乱していた。消防隊員や京急の作業員が線路内に入り、救助作業に当たった。

 線路近くの事務所で働く五十代男性は「大きな音が聞こえ外に出ると、線路際に果物が散らばっていた。三両目ぐらいから、乗客が脱出していた」と話した。

 「爆発したような音が聞こえ、地響きがあり、家の窓ガラスも揺れた。黒煙が上がり、銀色や黒の破片のような物が舞っていた」と近所に住む自営業藤田美花さん(59)。

 現場に行くと、「一番前の車両に乗っていて自力で何とか脱出した。衝撃がすごく今も震えが止まらない」と話す男性や、気が動転した様子で泣きじゃくり、携帯で電話している女性もいたという。「ドーン」という音を聞いて現場に行った女性(41)によると、車両が大きく傾き、火が出ているのが見えた。

◆自動ブレーキ必要

<工学院大の高木亮教授(電気鉄道システム)の話> 防げた事故なのかどうかの検証が今後求められる。列車事故を防ぐ本質的な対策としては、線路内の障害物を検知したら列車に自動的にブレーキがかかるシステムの導入が必要だ。既に宮城県内を走るJR仙石線などでは、踏切で遮断機が完全に下りるまでは列車が停止するよう制御する信号システム「ATACS(アタックス)」が使用されており、他の路線でも導入するべきだ。

◆国交省関東運輸局 トラック運転手の勤務先を特別監査

 京急線の衝突脱線事故で、国土交通省関東運輸局は五日、貨物自動車運送事業法に基づき、トラック運転手の勤務先の運送会社を特別監査した。運転手の勤務状況などを調べ、法令違反がないかを確認する。

 

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