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【社会】

認知症の人と、はしご酒した夜 オレンジ色がサポートの印 東京・町田

居酒屋でサポーターとお酒を楽しむ認知症の男性(右から2人目)=いずれも東京都町田市で、沢田将人撮影

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 認知症だって夜の街で一杯やりたい。そんな思いを支えるイベントが町田市で行われている。認知症の人がはしご酒を楽しみ、支払いやトイレの場所を迷うなど困った時は、同じ店にいるサポーターがさりげなくアシストする。サポーターの目印は、Tシャツや腕のリングなどのオレンジ色。記者も事前に認知症サポーター養成講座を受け、修了するともらえるオレンジリングをぶら下げて夜の街に向かった。(五十住和樹)

◆トイレにそっと寄り添って

 認知症の人と、その家族、支援する人が集まる「認知症カフェ」は、町田市では認知症を指す英語(dementia)の頭文字から「Dカフェ」と呼ばれている。今回の催しはこれをもじって「D−sake」と命名。「町田の繁華街を認知症にやさしい色のオレンジに染めたい」と約七十人のサポーターが集まった。

オレンジ色のTシャツなどを着て集合した「D−SAKE」の参加者

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 八月二十一日午後六時半すぎ、思い思いにオレンジをまとった人が三々五々集まってきた。認知症の妻(79)を連れた男性(79)は「人と触れ合う場所に来たい」と数人のサポーターと居酒屋へ。妻はビール、男性は日本酒を注文。山の会に入って夫婦で登山した思い出話などに花が咲いた。妻は「オレンジの人がいっぱい。すごいね」と笑顔を見せた。

 別の居酒屋では、認知症の八十一歳の男性がサポーターと静岡おでんをつついていた。ちょっと酒が回ったのか「日本の政治家はみんな認知症だ! 金もうけばかり」と、政治情勢にきつい一撃。「もし帰り道が分からなくなったらタクシーで帰ります。それだけのお金は持ってる」。男性がトイレの場所に迷った時、サポーターがそっと寄り添って案内した。

居酒屋でサポーターと乾杯する認知症の男性(左)

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 午後八時半、男性らは次の店へ。「町田の人は声を掛けたら応えてくれる。こういうイベントがあるからかな」と男性。盛り上がりは続いたが同九時半、はしご酒はお開きになった。

居酒屋を出て、サポーターと次の店へはしご酒

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◆認知症でもハッピー 知ってほしい

 「D−sake」は昨年十一月、今年一月に続いて三回目。ケアマネジャー長谷川昌之さん(43)らが企画した。認知症の人は周りに迷惑を掛けると外出を止められ、家に閉じこもりがちだ。ましてや「飲みに行くなんてとんでもない」と家族にも言われてしまう。認知症になったら何もできない、人生終わり。長谷川さんは、そんな偏見を払拭し「認知症でもハッピーにやっていけると知ってほしい」という。

 長谷川さんらは事前に飲食店を周り、「D−sake」を説明。店側からは「何をしたらいいか不安」などの声も出たが、「認知症当事者と話すだけでいい。まずは興味をもって」などと頼んだ。「うちの店を使って。ドリンクバーをサービスするよ」という飲食店も現れた。

オレンジ色のサポーターであふれる店内

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 社会参加は認知症予防や進行を遅らせる効果があるとされる。長谷川さんは「最近のことを記憶するのが難しいのに『この前の飲み会楽しかった』と言った男性がいた。楽しい記憶は残る。企画してよかった」と手応えを感じている。

◆洗車ボランティア、スタバでコーヒー…積極的に外へ

 町田市は認知症にやさしい街づくりに向け、認知症当事者や家族、医療や福祉関係者らが話し合って実現したい姿を16の具体的な文章にまとめた「まちだアイ・ステートメント」を作成。昨年11月には「まちだDサミット」を開いて市内外で活動する人たちが意見を出し合うなど、先進的な取り組みが多い地域で知られる。

 市内では、認知症の人が車のディーラーで洗車の有償ボランティアをしたり、コーヒーチェーン「スターバックス」8店舗で月1回認知症カフェ(Dカフェ)を開き、認知症の人が外に出て市民と向き合う活動が続いている。9月29日には全国各地で開かれている認知症の人と出会うイベント「RUN伴(ランとも)」が市内であり、主催者によると、約30人の当事者がたすきをつないで走るという。

(東京新聞 2019年9月5日付け朝刊「TOKYO発」面より)

 

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