東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<税を追う 製薬マネーの行方>(2) 新薬効用、ことさら強調

「製薬会社の講演会で薬を悪く言うことはほとんどない」と指摘する亀田総合病院の細川直登・感染症科部長=千葉県鴨川市で

写真

 「老人ホームでインフルエンザが流行した時、この薬を処方して一発で食い止めたという報告がある。肺炎や亡くなる人もいなかったそうです」。昨秋、埼玉県で開かれた塩野義製薬のインフルエンザ治療薬ゾフルーザに関する講演会。県内の四十代の男性開業医は講師の男性医師がそんなふうに説明するのを聞いた。

 「各分野の権威の先生から説明を聞けば、新薬を使ってみたい気にはなる。講演を聞いていた人も『おおっ』と驚いた感じだった」

 ゾフルーザは五日間の服用が必要なタミフルなどと違い、一回の服用で済む。即効性もあり、昨年三月の発売後、半年間のインフル薬の国内シェアは65%に達した。だが今年に入り、薬が効きにくくなる耐性ウイルスができやすいとの報告が相次ぎ、評判に疑問符が付いた。厚生労働省のまとめで、服用した人の9・6%に耐性ウイルスが発生。昨年十月〜今年三月のシェアは39%に落ちた。

 当初、急速に評判が広まった背景には、ゾフルーザに限らず薬の効用ばかりが強調されがちな、新薬の講演会のいびつさがある。

 講演会は製薬会社が各地の開業医らを集めて開く。インターネット上を含めて年に七千回開いた会社もあり、営業活動の中心になっている。講師は大学教授ら有力医師が多い。二〇一七年度に製薬会社七十一社が支払った講師料は二百三十一億円。受領額の合計が一千万円を超える医師も珍しくない。

 ゾフルーザの講演会で講師を務めた医師は「流行を早く収束させる可能性は重要なポイント。耐性ウイルスもきちんと説明した」と話した。講演料は十万円。「講師謝金をもらっても、会社におもねるようなことはしない」と強調した。

 講演を聞きに来る開業医らの交通費や宿泊費、講演後の飲食代も製薬会社が持つ。講師料や会場費を含めた一七年度の開催費は七十一社の合計で約千五百億円に達した。ゾフルーザの講演を聞いた開業医は丸抱えの講演会を「薬の処方に影響しないかと問われれば全否定はできない」と言った。

 塩野義製薬の広報担当者は「ゾフルーザの講演会は効き目の説明が多くなっていた。まずは安全性や耐性ウイルスを伝えていくよう方針を変える」と話した。

 一方、千葉県鴨川市の亀田総合病院感染症科部長の細川直登(なおと)医師(53)はゾフルーザの治験結果を海外の論文で検証し、「効果はこれまでの薬と同じ」として優先的に処方しなかった。

 「新薬の講演会で講師の医師が薬を悪く言うことはほとんどない。そこは差し引いて考えるべきだ」

 一度の治療にかかる薬価はゾフルーザが四千七百八十九円、タミフルは二千七百二十円。タミフルの後発薬(ジェネリック)の「オセルタミビルサワイ」は千三百六十円だ。窓口負担は一〜三割だが、残りも私たちが支払う保険料や税金で賄われる。インフル薬を処方される患者は年間千三百万人。仮に全員がゾフルーザを処方されていて、ジェネリックに変えたとすれば四百四十五億円安くなる計算だ。

 効き目が同じなら安い薬をなるべく処方しよう−。一見当たり前のような考えだが、医療の現場ではなかなか広まっていかない。

 シリーズ「税を追う」へのご意見、情報を募集します。ファクスは03(3595)6919。メールはshakai@tokyo‐np.co.jp 郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報