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【社会】

<税を追う 製薬マネーの行方>(3) 過剰接待 抜け道で脈々

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 「実は、抜け道を使って接待も金銭のやりとりも続いている。それがこの業界だ」

 料亭やクラブでの飲食、ゴルフや高級な贈り物…。高い新薬を売り込むため製薬会社が医師に行う過剰な接待が「薬の処方をゆがめている」と批判を浴び、製薬業界は二〇一二年に自主ルールを策定した。だが、中部地方の製薬会社に勤める営業担当者(MR)の男性は、「グレーになって脈々と続いている」と証言した。

 自主ルールはMRの飲食接待を医師一人五千円までと規定。薬の講演会の講師を務めた医師に対する慰労会は二万円までと決めたが、ここに抜け道がある。

 「医者を会社に招いて開く社内勉強会と称した資金提供がある。十分くらい雑談して謝金は五万から十万円が多い。勉強会を全くやらずに金は渡せないので、先生が会社に来た記録だけ残せばいい」

 その後、数人のMRで「慰労会に行きましょう」と医師を夜の街に連れ出す。飲食接待は一人五千円までだが、形だけの勉強会でも、この場合は「慰労」目的なので二万円まで可能となる。

 男性MRは「薬の使用継続や処方量アップ、他社製品に取って代わられそうなときに自社製品の防衛に使う。特に自社の新薬が他社のジェネリック(後発薬)に代えられないように会社は必死だ。医師に泣きつくときに謝金が生きる」と語る。

 抜け道は他の会社も使っている。中堅メーカーの女性MRは「社内の勉強会を十五分ほどで切り上げ、接待に連れていくことはある」。大手メーカーの男性幹部は「うちでは勉強会はきちんと一時間くらいはやっている」としたうえで、勉強会後の夜の接待は全社で年間二千回程度に上ると明かした。

 この大手メーカーだけで、毎晩五件以上の接待を全国で行っている計算だ。自主ルールが守られているかチェックする公正取引協議会に加盟する製薬会社は二百社を超えるため、業界全体では数え切れないほどの接待が毎晩繰り広げられていることになる。

 男性幹部が話す。「高血圧といった生活習慣病の薬のように、各社の効能にあまり違いがない場合、食事の席で『どうにか使ってください』と頼むと使ってくれることがある。医師の処方は人間関係で動く」

 こうした接待を可能にしているのが、製薬会社の高い利益率だ。日本政策投資銀行の資料によると、一七年度の主な医薬品メーカー(三十一社)の平均営業利益率は15・3%。自動車(九社)の6・9%やコンピューター・電機(六社)の5・2%を引き離し、全産業(千八百七十七社)の平均7・2%を大きく上回る。

 一方、国の財政制度等審議会が一六年度のデータを分析すると、売り上げに占める「販管費」(販売活動や管理にかかる費用)の割合は全産業平均が18・4%なのに対し、製薬大手八社は50・8%に達した。内訳は「宣伝費・営業費用等」が64・6%で「研究開発費」(31・4%)の倍の規模に上った。潤沢な資金を宣伝や営業に投入していることがうかがえる。

 「接待続きで疲れた」という冒頭の男性MRがつぶやいた。「医者とメーカーの金満体質にうんざりしているMRは多い。抜本的に改めたほうがいい」

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