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【社会】

<税を追う 製薬マネーの行方>(4)豪華弁当 たかりの発端 医学生の頃から特別扱い

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 昨年、東京都内のホテル。製薬会社が開く新薬の講演会に参加するためにやって来た開業医の男性は声を荒らげた。

 「他の製薬会社は認めているのになぜだめなんだ」

 薬の講演会では、地方から参加する医師が泊まるため、製薬会社が会場となるホテルに部屋を予約するのが一般的だ。数百人の医師らが入れる大ホールを備えた高級ホテルはシングルルームがないことが多い。このときもツインの部屋を医師一人で使ってもらうことにしていた。

 開業医は事務員の女性を連れ、一緒にチェックインしようとした。「同伴者の宿泊は認めていないんです」。製薬会社の社員が説明しても聞き入れず、怒鳴り散らした。結局、女性分の宿泊代は開業医が支払い、二人で泊まることで落ち着いた。

 新薬の講演会は製薬会社が全国の医師に薬を使ってもらうためにPRする重要な営業の場だ。交通費や懇親会費も製薬会社がすべて負担する。

 「講演会にかこつけ、奥さんや彼女を連れてくる医師がたまにいる」とこの製薬会社の男性幹部。「他社の場合、会社が同伴者の代金まで支払うケースや、自分で支払うなら最初から同伴OKにしているケースがある」と言う。

 ホテルだけではない。中部地方のある医師の場合、自宅から新幹線の駅まで電車を使わず、片道二万五千円かかるタクシー代を製薬会社に出させた。新幹線の座席をグリーン車の席に変更するよう求める医師もいる。

 「それでもできるだけ医師の要求は聞こうと思う。やっぱり薬を使ってほしいし、怒らせたら元も子もない」。幹部はそう話した。

 医療の健全化に取り組むNPO法人「医療ガバナンス研究所」メンバーで、現在は都内のクリニックに勤める内科医の山本佳奈さん(30)は、製薬会社にたかる医師がいるのは大学医学部時代の経験が大きく関係していると言う。

 大学病院では、製薬会社が昼休みに医師を集めて薬の説明会を開くことが多い。その際、上限三千円の高級弁当が提供される。「貧乏学生だったので正直ありがたかった。余った分を持ち帰ることもあった」と言う。

 今も大学病院に勤める研修医の同級生は週に二〜三回弁当を食べているといい、「毎回豪華でうれしい。弁当がなくなったら誰も話を聞かないだろう」と話したという。

 中堅製薬会社の営業担当者(MR)は「MRが車で大量の弁当を病院に運び込む姿は日常茶飯事」と言う。

 山本さんは「無料の豪華弁当に初めは驚くが、だんだんと慣れてしまう。医学生の頃から弁当はもらって当然という文化が染み付いているから、どんどんたかりが度を増していく。製薬会社もこうした医師の意識を薬の処方アップにつなげようとしている」。

 その上で、こう考える。

 「誰を向いて医療をすべきなのか。われわれ医師は患者のための医療をあらためて見つめる時にきていると思います」

 

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