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【社会】

冷房の余力なし 82歳死亡 特養来なかった電源車

台風上陸の4日後に配備された電源車の横に立ち、「もう少し早ければ」と話す天笠さん=16日、千葉県君津市で

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 台風被害としては異例の長期にわたる停電が続く千葉県では、十二日に君津市の特別養護老人ホーム(特養)「夢の郷(さと)」に入所していた女性(82)が、熱中症の疑いで亡くなった。この施設は停電直後から国や県へ電源車の配備を求めたが、実現したのは十三日未明で、九日から四日間にわたって非常用の自家発電機だけでしのぐことを強いられた。 (井上靖史)

 施設は災害時に高齢者が身を寄せる市の福祉避難所に指定されている。避難の問い合わせは数件あったが、停電を説明すると誰も来ず、結果的に機能しなかった。天笠寛理事長(56)は「用意した発電機が足りなかった反省はあるが、優先順位を考えてもらいたかった」と語った。

 施設には百六歳までの約百人が暮らす。もともと自家発電機は三台あり、台風後に知人から譲り受けて二十台に増やした。それでも固定電話や調理室の冷凍庫、薬剤を保管する冷蔵庫など施設機能の維持に必要な電力を確保するため、エアコンは動かせなかった。

 台風通過後、最寄りの観測地点がある隣の木更津市の最高気温は九日が三二度、十日は三五度、十一日は三三度と酷暑が続いた。入所者十人ほどが体調不良を訴えたが、職員が湿らせたタオルを体に当てるなどしてしのぐのが精いっぱいだった。一台しかない扇風機は調理室で使用。居室には置かれておらず、室温は外気とほぼ同じか、やや低い程度だったという。

 亡くなった女性は次第に食欲が落ち、言葉も発しなくなった。十一日朝の検温で体温が三八・八度まで上昇し、同日午前九時に救急車を呼んだ。

 救急隊は五カ所に入院を打診したが停電のため断られ、しばらく出発できなかった。午前十時すぎに外来診療を行っていた市内の病院に搬送されたが、ここも停電で十分な治療ができず、紹介を受けた君津中央病院(木更津市)に到着したのは正午すぎで、入院できたのは午後三時すぎ。女性は十二日朝に亡くなった。

 十日に電力会社が停電状況の確認に訪れ、国や県から電源車の必要性の照会を受け、求めたが配備されなかった。十二日に困り事がないか問い合わせてきた地元選出の野党国会議員へ「一人が亡くなっている」と伝えると、十三日未明に電源車が到着、通電した。

 千葉県災害対策本部によると、電源車の配備先は東京電力が市町村と話し合って決める。担当者は「社会福祉施設を優先する方向性はあるが、福祉避難所などの優先順位までは決めていなかった」としている。

 君津市の担当者は「特養や病院、老人保健施設が集まった(要支援者)六百人ほどの場所を今回は先にした。今後は優先順位の指針作りなども検討する必要がある」とした。

 停電中は給水ポンプも使えなかった。天笠さんは「なるべくトイレに行かないよう、水分を取らないことも熱中症の危険を高めた」と振り返った。

 

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