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【社会】

傍聴して分かった「東電の無責任体質」 憤る遺族 判決は午後

「旧経営陣は自らの保身しか考えていないように思えた」と話す菅野正克さん=水戸市で

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 東京電力福島第一原発事故を巡り、東電の旧経営陣三人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された公判では、事故前に東電社内で大津波対策が検討されていたことが明らかになった。それなのに何ら対策が取られないまま事故は起きた。公判を傍聴してきた遺族は「旧経営陣は事故を起こしたことの重大さに向き合っていない。無責任だ」と憤っている。(小野沢健太)

 福島県大熊町で精肉店を営んでいた菅野正克さん(75)=水戸市=の父健蔵さん=当時(99)=は、近くの双葉病院に認知症で入院していたものの、事故後に長時間の避難を強いられ、三カ月後に亡くなった。

 菅野さんは昨年二月に公判を傍聴した際、原発を襲う可能性のある津波の高さを「最大一五・七メートル」と試算した東電子会社の社員が、証人尋問で「専門家の学会で使われている手法で計算したものだ」と自信を持って答えていたのが印象に残っている。

 菅野さんは「子会社の社員は実直に受け答えしていた」と感じた。なぜ旧経営陣は試算を真剣に受け止め、対策を取らなかったのか、疑問が膨らんでいった。

 菅野さんは、子会社からもたらされた試算について、東電の地震・津波対策担当者から直接報告を受けた武藤栄元副社長(69)の被告人質問も傍聴した。そのとき、対策を取らなかったのは「利益を最優先したい企業体質からだ」と感じた。

 沖合に防潮堤を設置すれば数百億円かかることなどが担当者から報告された会議で、外部機関に試算の根拠を再検討してもらうよう指示した武藤元副社長。検察官役の指定弁護士に「対策の先送りではないか」と指摘されると「大変心外だ」と語気を強め、後は「知らない」「事故は防げなかった」などと繰り返した。

 菅野さんは「反省や後悔の念は一切感じられなかった。受け答えはとても無機質で、犠牲者や遺族に申し訳なく思っている感情は全く伝わらなかった。自らの保身しか考えていないように思えた」。父や自分の人生を一変させた当事者の姿勢に怒りがこみ上げた。

 「原発事故さえなければ、おやじはいつの日か安らかに大往生できただろう」と語る菅野さん。「事故は防げたはずだ。公判を通じて、東電が無責任体質だということが改めてよく分かった」と断じた。

 

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