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【社会】

違法売買、ワンクリック ネット闇市場、潜入取材

闇市場サイトについて解説するトレンドマイクロの岡本勝之さん=東京都渋谷区で

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 クレジットカード情報や違法薬物などが売買され、「犯罪の温床」と指摘されるインターネット上の闇市場サイト「ダークウェブ」の深刻さが増している。実際にどんな形で売られているのか。ネットセキュリティー会社の協力を得て、「闇の世界」に入ってみると−。 (木原育子)

 画面の背景は真っ黒。無機質なデザインで、ロシア語の文字が目に飛び込んできた。「英語や中国語もありますが、ロシア語のサイトが一般的ですね」と、「トレンドマイクロ」(東京)の岡本勝之さん(53)。ダークウェブは冷戦崩壊後、ロシア語圏で特に発達したという。

 ダークウェブは、グーグルやヤフーのような誰でもアクセスできるネット空間と違い、表に現れない「深海」に例えられる。特定の方法を知らなければ、たどり着けないとされる。

 今回潜入したのも、そんなサイト。文字を英語に切り替えてもらい、箇条書きでずらりと並んだ「商品」を一つずつチェックした。

 「ブルガリアの○○省から漏えいした情報の詳細内容」「ウイルスを拡散できるマルウエア(不正ソフト)」など。手軽さと多彩さに、まるでネットショッピングをしているような錯覚に陥っていく。

 価格は「○○(大手通販サイト)のアカウント 十九件で一ドル(約百五円)」と格安品もあれば、「米国医療保険関連情報 九百三十万人分で二百ビットコイン(三年前の出品時約千四百三十万円)」など高額な取引も。薬物や銃器、児童ポルノもあり、気になったものがあればクリック一つで購入できる。

 サイバー攻撃できる「マルウエア」を試しにクリックしてみた。すると、間髪入れずに「こんにちは! 私はこの製品のチャットボットです」と、フレンドリーな文言の画面に替わった。

 チャットボットとは、自動の対話プログラム。岡本さんによると、昨年ごろから出品者との直接交渉ではなく、摘発リスクを避けるため、人工知能(AI)型のチャットボットを使う方法が増えているという。

 マルウエアには丁寧に書かれた取扱説明書もあり、読み終えたことを示すボタンを押すと、仮想通貨での支払い画面に。もちろん購入せず、異空間を後にした。岡本さんは指摘する。「ダークウェブ空間は、サイバー犯罪につながる多くのツールが簡単に手に入ってしまうんです」

違法な商品が取引される闇市場サイト=一部画像処理

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◆知らぬ間に個人情報悪用も

 利用者が気付かないうちにクレジットカード情報やID、パスワードが抜き取られた被害が後を絶たない。こうした情報は、ダークウェブ上で流通し、悪用されている可能性がある。

 近年は、スマートフォンの電子決済サービス「ペイペイ」「アップルペイ」などで不正利用が相次いだ。今年7月にはセブン−イレブンで使える「7pay」の不正アクセス事件が発生。警視庁の捜査幹部は「ダークウェブを経由していた可能性はある」と話す。

 2018年1月、仮想通貨交換業者「コインチェック」から約580億円相当(当時)の「NEM(ネム)」が流出した事件でも、一部がダークウェブで別の仮想通貨に交換され、マネーロンダリング(資金洗浄)に利用された疑いが持たれている。

 こうしたサイバー空間を巡る捜査は、不正接続が複数の国のサーバーを経由することが多く、海外の捜査機関との協力が不可欠だが、解明に時間がかかる。日本ハッカー協会の杉浦隆幸代表理事は「民間の専門知識を活用し、国際的な組織をつくるなど、積極的に対処していく必要がある」と話している。

 

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