東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<ラグビーW杯>スタジアム 何万人も食料不足 売店の22歳、切実ツイート 大会動かした

「観客第一に」と話す宮田瑞希さん=27日、横浜市の日産スタジアムで

写真

 「スタジアムにいる何万人という人が食料不足に苦しんでいる」−。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で、禁止されていた会場への食べ物の持ち込みが開幕後に容認される異例の事態となった。発端は、食品が早々に売り切れた売店のアルバイト学生の会員制交流サイト(SNS)への投稿。学生は本紙に当時の状況を振り返り、「来年の東京五輪・パラリンピックでもしっかり考えて」と訴える。 (原田遼)

 「スポーツ会場で働いて四年目だけど、こんなにお客さんに笑顔がなかったのは初めて」「私がもし海外から来ていたら、日本を嫌いになると思う」

 ニュージーランド対南アフリカ戦が行われた二十一日夜、都内在住の大学生、宮田瑞希さん(22)はツイッターに投稿した。

 会場となった横浜市の日産スタジアムでは、スポンサーのビール会社への配慮とテロ防止のため、飲食物の持ち込みが禁止された。宮田さんの売店は試合開始三時間前の開場とともに客が殺到し、開始一時間前には揚げ物や菓子が完売。「なぜ食べ物がないのか」「子どもだけにでも何かを」。カウンターは怒る外国人客や、泣きやまない子どもで騒然とした。

 一方、大会スポンサーのビールは売れ残った。「スポンサー商品を優先的に売るために、食事が少なかったのではないか」。宮田さんは大会組織委員会に不信感を持った。

 ツイッターには名前や顔写真、大学名を公開していたが、「観客に何かあってからでは遅い」と、個人が特定されるのをいとわず経緯を約二十回に分けて投稿。約二万人以上にリツイート(転載)され、大会公式アカウントには批判のコメントが並んだ。

 その二日後の二十三日、組織委は全会場で食べ物の持ち込み容認を決めた。飲み物は、可燃性の液体が持ち込まれる危険から規制を変えず、給水所の利用を促した。組織委は本紙の取材に、規制緩和の理由を「食事の需要に応えられず、苦情が多かった」と語ったものの、「スポンサー商品さえ売れればいいとは考えていない」とした。

 ラグビー取材が長いスポーツライター藤島大(だい)さんは「今回は食べ物のニーズ予測を誤ったのではないか」と推測。そのうえで持ち込みについて「スポンサーの保護も大事だが、楽しむ場所なのだから、なるべく寛容にするべきだ」と指摘する。

 来年の東京五輪・パラリンピックでも飲食物の持ち込みが制限されているが、今回を参考に規制緩和が検討されている。東京大会のあるスポンサーは「場内の自社商品の売り上げに影響が出る」と懸念する。

 宮田さんは「お客さんの体を第一に考えてほしい。観客が飲食にストレスを感じれば、結果的にスポンサーの印象が悪くなり、本末転倒になってしまう」と話している。

ツイッターに投稿した内容の一部

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報