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【社会】

【動画あり】バイト先でも思わず「オッス!」 われら大学応援団 存続の危機がはぐくむ“愛”と“連帯”

 学ラン姿で返事は「押忍(オス)」。口を顔いっぱいに開いて絞り出す声援と、規律ある演技でエールを送る大学応援団は、日本固有の学生文化の一つ。ところが彼らが今、団員不足に悩んでいるという。魅力を広く発信しようと学生たちが開催した「第二回大学応援団フェスタ」で、応援団の今を見つめた。(文、写真=中村真暁)

こぶしを力強く突き出す女性応援団長

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 先月末に渋谷区で開かれたフェスタ。背中を反らしたり、高速で腕を振り回すはかまや学ラン姿の団員たち。一糸乱れぬ動きに、観客はみな目がくぎ付けだ。全身を使って出す声と、鼓膜が破れそうなほど力強い太鼓の音が響き渡った。十二団体が紅白に分かれてステージを繰り広げ、観客らの審判で紅組が勝利した。

紅組勝利に最も貢献した一橋大学体育会應援部のステージ

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 ディスカッションでは、各団長が「誇りと自信が持てる場所」などと「応援団愛」を熱弁。女性団長からは「練習などで男女を区別しないで」と声も上がり、多様化する姿もそのままに伝えた。髪形を整えるワックスに詳しい。バイト先でも「オス」と言ってしまう。そんな笑える「あるある話」も。

ディスカッションで応援団のあるある話を紹介する各応援団長たち

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 大学それぞれのスタイルを受け継ぐ応援団だが、近年は「上下関係が厳しそう」「何をしているか分からない」と敬遠され、深刻な状況に直面している。この十五年間で約十団体が休団。現存する団体の多くも存続が危ぶまれる。

 このままでは伝統を継承できない−。危機感を募らせた二十一団体の団員やOBは三年前、研究会を立ち上げ、「応援団とは何か」といったテーマを二年間にわたって議論した。課題の一つは発信力の弱さ。ド迫力の応援を見てもらい、現役生の技術も高め合える場として、昨年、フェスタを初開催した。

 「応援した相手から感謝の言葉をもらうと、続けてきてよかったと感じる」と、國學院大學全學應援團(こくがくいんだいがくぜんがくおうえんだん)長でフェスタ実行委員会会長の細谷慶太郎さん(23)。五輪・パラ大会を控え、応援団文化を日本のレガシーとして残していくのが夢だ。「いろいろな角度からの発信で、イメージを変え、楽しく、立派だということを知ってもらいたいのです」

熱いメッセージも飛び出した各応援団長によるディスカッション

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◆「日本独自の文化」

 リーダー部を中心とする大学応援団は、どんな歴史をたどってきたのか。応援団文化を研究する鳥取大の瀬戸邦弘准教授に聞いた。

 応援団は、近代に誕生した日本独自の「無形文化財」です。そもそもは旧制中学・高校の運動会や対外試合で自発的に応援していた集まりが原型と考えられています。東京六大学野球などでは、球場を埋め尽くす熱狂的なファンの秩序を保ち、応援を統制する役割も担ってきました。

 その特徴は近代日本の歩みとともにあり、当時の記憶を重層的に保持してきた点にあります。競技ではないため、応援団は勝つための合理性を追求する必要がなく、受け継がれてきた伝統を大切に守ることができました。

 例えば、今も残る厳しい規律や上下関係は、近代社会を覆っていた「空気」の名残とも言えるでしょう。加えて、1960年代から、チア部の活動が東京六大学野球などで始まったように、時代のニーズに合わせた新しい応援スタイルも獲得してきました。

 応援団とは他人のために命を燃やすことを幸せだと感じられる人たち。そうした価値観を守り伝えてきた人たちだと考えています。

腹の底から声を出す団員たち

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<大学応援団> 学ラン姿などで応援をまとめるリーダー部、吹奏楽部、チアリーディング(チア)部の三部で構成することが多いが、一般的にはリーダー部を指す。フェスタ実行委員会によると、現在活動する大学応援団(リーダー部)は全国で約60団体。

2019年10月8日東京新聞朝刊「TOKYO発」面に掲載

 

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