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【社会】

水道、トイレ、エレベーターが使えない… 武蔵小杉タワーマンションの教訓

 各地に大きな爪痕を残した台風19号は、想定外の被害をもたらした。武蔵小杉駅(川崎市中原区)近くにある47階建てタワーマンションでは地下にある配電盤が浸水で壊れ、停電と断水が続いている。地震や風には強いとされるタワマン。水への備えはどの程度なされているのか。(片山夏子)

タワーマンションが立ち並ぶ武蔵小杉駅周辺。台風19号で冠水して泥が残る=15日、川崎市中原区で

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◆一帯が冠水、停電で排水ポンプが機能失う

 「しばらく避難する」。多くのタワマンが立ち並ぶ同駅周辺は台風19号による大雨で、一帯が冠水。泥が残る十五日午後、停電したマンションから荷物を持って出てきた六十代の夫婦は、疲れ切った表情を見せながら言葉少なに駅に向かった。

 停電により、各戸のトイレを流しても排水ポンプが動かないため下水からあふれる恐れがあり、市によると、各戸には水に加えて簡易トイレが配られたという。エレベーターが使えないのも住人にとっては大変な苦労。近くの別のタワマンに住む男性は(72)は「今回はうちは大丈夫だったけど、高層階に階段で水や食料を運ぶのは高齢者には無理」と話す。

◆タワマン、一都三県に七百二棟 水害対策の基準なし

 タワマンは一般的に、高さ六十メートル以上、もしくは二十階建て以上の高層マンションを指す。一九九〇年代後半から増え始め、不動産調査会社「東京カンテイ」(東京都品川区)によると昨年九月現在、東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県に七百二棟あり、二〇〇八年十二月の四百五十四棟から大幅に増加している。

 建築基準法はタワマンなど高さ六十メートル超の建物を建てる場合、地震波でどう変化するか厳しい検証をするよう求め、同六十メートル以下の建物に比べて一・二五倍の風速に耐えられる構造にすることを義務付けている。ただ、国土交通省建築指導課の福井武夫企画専門官は「水害については、建築基準法で一律に求める基準はない」と説明する。

◆スペース有効活用のため配電盤を地下に設置、被害に

 武蔵小杉駅周辺にあるタワマンの防災機能を高めようと、各管理組合などの連携を深める取り組みをしているNPO法人「小杉駅周辺エリアマネジメント」の安藤均理事長は「これまで、大きな台風は関東をそれるケースが多かった。東日本大震災の経験もあって地震の対策はしているが、水害対策はほとんどのタワマンが取っていないのではないか」と解説する。

 マンションの防災に詳しい千葉大の小林秀樹教授(住環境計画)によると、大半のタワマンはスペースを有効活用するため、配電盤は地上ではなく地下に設置されている。小林氏は「タワマンは地震と風には強くても、配電盤などが壊れて被害が出ることはある」と説明する。

◆配電盤は地上に、住民は三日分の備蓄を

 ここ数年、従来は考えられなかったような規模の台風や豪雨がたびたび発生している。小林教授は、地下に完全に水が入らないよう密閉性を高めるのは費用などの面から簡単ではないと指摘し、こう訴える。

 「マンションによって違うが、屋上の貯水タンクはせいぜい一〜二日、自家発電も数時間程度で長くはもたない。これから建設するタワマンは、地上に配電盤を置くといった対策も考えるべきだろう。住民は、三日間分の水と食料を用意し、それとは別に管理組合も同様の備蓄をしていく必要がある」

(2019年10月16日東京新聞朝刊「特報面」に掲載)

 

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