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【社会】

台風死者数77 氏名公表数21 12都県割れる判断、危ぶむ識者

福島県二本松市の土砂崩れ現場で、行方不明者の捜索活動を行う自衛隊員=13日

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 広範囲に被害をもたらした台風19号は、死者が出た12都県の判断が割れ、氏名が公表された人の数が少ない。17日夕現在、77人のうち4県の21人で、専門家から「異様」との指摘も。公表していない県は遺族の同意がないことなどを理由に挙げるが、「災害対応の検証や教訓が得られなくなる」と危ぶむ声が出ている。

 ▽前例

 「東日本大震災でも死亡者の名前を出さなかった」。福島県の甚大な被害が判明しつつあった十四日、県の角田(かくた)和行災害対策課長は前例を踏襲し、公表しないと強調した。

 静岡県の担当者も「(公表の)必要性はない。(公表に応じるかどうか)遺族の意向確認もしていない」と話す。

 茨城県は遺族の「公表しないでほしい」との強い要望を尊重した。

 一方、岩手県は遺族の同意を得た上で明らかに。十六日公表した長野県の担当者は取材に「社会的な関心の高さなどを考えた。遺族にはご理解をお願いした」と説明した。

 国の防災基本計画は、死者と行方不明者の数は「都道府県が一元的に集約する」と定めるが、氏名公表に関する規定はない。自治体の判断に委ねられているのが実情で、昨年の西日本豪雨では広島、岡山、愛媛各県の対応が大きく異なった。

 ▽「限定的」

 竜巻とみられる突風で一人が死亡した千葉県。県警の担当者は「災害時の死傷者らの集約は県が担うとの県地域防災計画に基づき、こちらからは公表しない」。県の担当者は「氏名は把握していない」とする。

 過去には捜索上の必要性から公表したケースも。昨年の北海道地震で、厚真町は土砂崩れで亡くなった三十六人の氏名を公表した。「不明者がほかにいないと確認し、捜索を終えるため」だった。

 共同通信が五〜六月、全都道府県知事を対象に行ったアンケートでは、死者の氏名について、六割弱が「公表する」「条件が整えば公表する」と回答した。

 黒岩祐治知事が「公表する」と答えた神奈川県は今回、公表していない。担当者は「数も限定的で、氏名情報を収集していない」という。

 ▽重要な情報

 全国知事会は今夏、氏名公表に関する全国統一基準を作るよう国に要望。当時の山本順三防災担当相が知事会と協議する意向を示したが、具体的な動きはまだ見えない。

 福島県の内堀雅雄知事は十四日、報道陣の取材に「(政府に)基本的な考え方の整備を要望している」と早期の対応を求めた。

 現状について、静岡大防災総合センターの牛山素行(もとゆき)教授は「異様な状況」と指摘。氏名公表の利点として(1)安否確認の問い合わせが自治体などに殺到するのを防ぐ(2)関係機関で情報を共有しやすくなる−などを挙げる。

 牛山教授は公表された氏名も参考に犠牲者の被災状況を分析しており、「遺族への配慮は必要だが、過度に情報が秘匿されると課題や教訓が伝わらなくなるのでは」と不安視。「名前が刻まれた石碑の前に立つと、そこで亡くなった人がいる実感がこみ上げる。災害の恐ろしさを伝える重要な情報だ」と訴える。

 田島泰彦・元上智大教授(メディア法)は「数ではなく、それぞれの人生を持つ人が亡くなった事実を社会全体で受け止めるため、公表すべきだ」と匿名化が進む現状に警鐘を鳴らした。

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