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【社会】

新酒仕込みどうすれば 栃木・佐野 老舗蔵元に押し寄せた泥水

仕込みタンクの前で、「高さ50センチほど水が押し寄せた」と手で示す島田さん=いずれも16日、栃木県佐野市で

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 台風19号による濁流は各地の酒蔵も直撃した。栃木県佐野市では、創業三百四十六年になる県内最古の老舗蔵元「第一酒造」が浸水被害を受けた。ちょうど酒づくりの仕込みが本格化する時期。社長の島田嘉紀(よしのり)さん(53)は「こんな事態は初めて。仕込みの遅れは避けられない」と硬い表情。配線が水に漬かり、固定電話やファクスがつながらない状態で、不安な日々が続いている。 (北浜修)

 第一酒造は江戸初期の一六七三年創業。創業時から稲作農家でもあり、いまも田植えから収穫まですべて社員たちが育てている。コメの等級検査も自ら実施する全国唯一の酒蔵だ。清酒「開華(かいか)」は明治期以来のブランド。文明開化にちなんだ「開化」から、昭和初期にいまの名になった。首都圏を中心に全国へ出荷している。十二代目にあたる島田さんは「佐野は昔から良質な水に恵まれ、酒造りに適している」と言う。

 だが十二日夜、恵みの水が牙をむいた。市内を流れる秋山川の堤防が決壊、川から五百メートルほどの同社も、酒蔵や事務所が深さ五十センチほどの泥水に漬かった。酒の貯蔵タンクや、もろみを仕込むタンクの内部に被害はなかったが、周囲まで泥水が押し寄せた。出荷を控えた酒瓶も約三分の一が泥水に漬かり、出荷できるかどうか分からない状態という。

第一酒造の建物内からかき出された汚泥

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 事務所では、パソコンや電子データは無事だったが、配線が浸水。固定電話やファクス、インターネットが使えなくなった。「これまで水の恵みで仕事をさせていただいてきた。それが、これから仕込みという時に水の被害を受けるとは…」と複雑な心境を語る。

 例年十月から翌三月ごろまでが仕込みの時期で、数カ月から一年ほど貯蔵し、瓶詰めして出荷する。仕込みが本格化する矢先だっただけに、打撃は小さくない。

 だが、十三人の社員はみんな無事だった。地域のボランティアの力も借りて蔵や事務所から泥や水を外へ掃き出す作業を続けている。島田さんは、力強く言う。「仕込みは遅れるだろうが、できるだけ早く仕事は再開したい。佐野で創業した会社として、これからも酒造りは続ける」

 

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