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【社会】

台風19号 1週間 87棟損壊の市原「まだ何も考えられない」

竜巻で大きく損傷した自宅前で被害を話す鎗田義夫さん=18日、千葉県市原市下野で

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 台風19号の上陸から十九日で一週間になった。各地で河川の氾濫や土砂崩れを引き起こした台風は、十二日夜の上陸の何時間も前から猛威を振るった。同日朝に起きた竜巻で家屋が次々になぎ倒された千葉県市原市では、倒壊した自宅の片付けに追われている。雨にぬれる被災地に「まだ何も考えられない」とため息が漏れる。 (山口登史、中谷秀樹)

 「『ゴー』という音が少しずつ近づいてきたと思うと、二階部分が丸ごと吹き飛ばされた」。市原市永吉の鉄筋工、鑓田(やりた)康裕さん(66)は土台だけになった自宅の跡地を前に言葉を詰まらせた。

 台風19号が伊豆半島に上陸したのは十二日夜。一家を襲った竜巻はその日の朝に起こった。

 築五十年以上の木造二階建ての鑓田さんの自宅では、家族でテレビを見たり、朝食を準備したり。そんな日常がわずか一、二分で跡形もなく吹き飛んだ。予想だにしなかった猛威に「全員の命が助かっただけ良かった」。

 市内の親族宅に避難しながら、自宅跡の片付けに追われている。今も、地域にはまだ大量の木材が散在。屋根にブルーシートが掛けられた家も並ぶ。「今後のことは何も考えられない」とうつむく。

崩れた家屋の片付けをする鑓田康裕さん(右)=19日、同市永吉で

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 隣接する同市下野の無職鎗田(やりた)義夫さん(66)の木造二階建て住宅も屋根や外壁が吹き飛ばされた。九月の台風15号でガレージのアクリル屋根が飛んだ経験から、19号に備えて養生テープで窓ガラスを補強していた。十二日夜の上陸を警戒していたが、「まさかこんな時間に突風が来るなんて。養生テープなんて役に立たなかった」と嘆息する。

 市原市で発生した竜巻は、南東から北西方向に五百メートル〜一キロほど移動したとみられる。全壊九棟を含む住家八十七棟が損壊、横転した乗用車内で男性(50)が死亡した状態で見つかった。乗用車が遠くに吹き飛ばされるほどの威力だった。

 千葉県は県内全域に「被災者生活再建支援法」を適用すると発表。被災者の住宅再建のため、全壊や大規模半壊を対象に最大三百万円が支払われる。

 竜巻被害については「全壊住宅が十以上の市町村」などの同法の適用条件に満たないため、森田健作知事は当初、「被災者支援のハードルは高い」としていた。ただ、今回の竜巻は台風19号に関連する災害とみられ、県が台風15号と19号の被害を合わせ、県内全域を支援適用対象と決めたことで、市原市も支援が受けられる見通しとなった。

 現在は親族宅を転々とする鎗田さんは、住宅再建の支援を受ける手続きの準備を進めている。「一日も早く普通の生活を取り戻したい」と支援の行方を見守る。

◆台風の北東側 発生しやすく 

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 千葉県市原市で十二日朝に起きた竜巻は、風速約五五メートルと推定され、気象庁では台風に伴って発生したとみる。

 気象庁予報課によると、台風のときは竜巻が起こりやすくなる。過去のデータによると、一九九一〜二〇一七年に国内で発生した竜巻六百六十六件のうち、台風に伴う発生は九十三件で約14%に当たる。

 竜巻が発生しやすいのは台風の目の北東側、つまり進行方向に対して右前方の方角で、台風の目から距離四百キロを中心にした広い範囲。突風が発生した当時の天気図を見ると、市原市はちょうど台風の目の北東方向にある。

 発生当時の市原市付近には、台風によって海からの暖かで湿った空気が吹き込んでいた。暖かく湿った空気は比重が小さくて軽いので上昇しようとして大気の状態が不安定になる。するとスーパーセルと呼ばれる巨大積乱雲ができ、これが竜巻を生み出すもとになる。

 市原市に隣接した千葉市の気象データを見ると、台風が近づくに従って十日夜から湿度が上がり、十二日未明からは気温も急上昇している。千葉県には、発生一時間ほど前に竜巻注意情報も出ていた。 (永井理)

 

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