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【社会】

戦火に翻ろう 私たちも日本人 比残留2世 国籍回復求め来日

身元調査のための聞き取りに応じるフィリピン残留日系2世ら=2018年6月、フィリピン・サンボアンガ市で(PNLSC提供)

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 私たちも日本人と認めてほしい−。太平洋戦争前にフィリピンに移住した日本人男性と現地女性の間に生まれ、戦後は反日感情の強いフィリピンで迫害や貧困に苦しんだ残留日系二世らが二十八日、日本国籍の回復などを政府に訴えるため来日する。抱き続けた祖国への思いを市民にも伝えようと、三十日夜に東京都内でシンポジウムを開く。 (石原真樹)

 来日する日系二世は、岩尾ホセフィナさん(82)、寺岡カルロスさん(88)、大下恵美子さん(79)の三人。

 三人とも父親は日本人、母親はフィリピン人。岩尾さんは戦時中に現地で殺された父親の身元が近年まで分からず、無国籍となっている。寺岡さんは戦前に父親が病死、戦争で母親やきょうだいも失った。大下さんは戦時中に父親と生き別れになり、戦後は日本人であることを隠して暮らすなど苦しい生活を強いられた。

 来日中は国会議員とも面会し、政府が身元調査や国籍回復支援などを迅速に行うよう求める。

 二世らを支援してきたNPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンター(PNLSC、新宿区)によると、米領だったフィリピンには戦前、最盛期で三万人以上の日本人移民が暮らした。一九四一年に日米が開戦すると日系人は日本軍に徴用され、通訳や飛行場建設の労働力にされた。

 日本の敗戦で一世は日本に強制送還された一方、二世の多くは生まれ育った現地にとどまった。しかし、戦争で大きな被害を受けたフィリピンは反日感情が強く、差別や報復を恐れて出自を隠したり、無国籍状態になったりしたため十分な教育を受けられず、多くは貧困層に属している。

 日本政府は、中国残留邦人には状況調査や無戸籍の人への便宜供与などを実施しているが、フィリピン残留日系人への支援は行っていない。厚生労働省は「中国とは長らく国交がなかったが、フィリピンとは五六年に国交が正常化して比較的早く往来ができるようになり、経緯が違う」と説明する。

 外務省の調査によると、フィリピン残留二世は三千八百十人。PNLSCは現地で聞き取り調査を行い、日本人であることを証明する手掛かりを捜しているが、今も千六十九人が日本国籍を回復できていない。

 寺岡さんは「無国籍で日本人にもフィリピン人にもなれない二世が多くいる。戦争によってこのような問題が起きてしまったことを、日本の皆さんに知ってもらいたい」と語った。

 PNLSC事務局の石井恭子さん(52)は「二世の平均年齢は八十歳を超え、最後の力を振り絞って来日する。生の声を聞いてほしい」と話す。

 シンポジウムは三十日午後六時半から、新宿・四ツ谷駅前の主婦会館プラザエフで。資料代五百円。事前申し込みが必要。申し込みはPNLSC=電03(3355)8861=へ。

 

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