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【社会】

多剤服用の有害リスク 2病院から同種の睡眠薬

服用していた複数の種類の薬を前に話す男性=東京都新宿区で

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 多くの種類の薬を服用することにより、転倒や記憶障害などの有害な症状が現れる「ポリファーマシー」(多剤服用)が社会問題となっている。ポリファーマシーは患者の健康リスクを高めるだけでなく、年約十兆円の薬剤費の無駄にもつながる。高齢者は生活習慣病や老化で多剤服用になりやすい傾向があるものの、専門家は「五〜六種類以上の薬を飲むと、有害事象の危険性は高まる」と警鐘を鳴らす。 (藤川大樹)

 「こんなに飲んだら、素人が考えても体に悪いだろう。お薬が逆に『毒』になるんじゃないかな」

 東京都新宿区のマンションで妻らと暮らす男性(84)は机に広げた多量の薬を前に、そうつぶやいた。六十歳を過ぎたころから徐々に服用する薬が増え、数年前から頭がボーッとするようになった。十月下旬に入院した際には、病院から「多剤服用でせん妄(意識障害など)の症状が出ている」と伝えられた。

 男性は高血圧や狭心症、前立腺肥大症などを患っている。定期的に内科と心療内科の二つの病院に通い、八種類の薬を常用する。慢性的な膝の痛みも抱え、整形外科から、さらに二〜三種類の薬を処方されることもあり、服用する薬は多い時で十種類を超える。

 このうち、二つの病院からは同じ薬効の二種類の睡眠導入剤と、精神安定剤一種類を処方。この二種類の睡眠導入剤について、男性を担当していない複数の医師らは「(医療現場では)併用されているケースもあるが、併用しないに越したことはない」などと指摘。ただ、男性によれば、処方箋は同じ調剤薬局に持っていっていたが、薬剤師から服薬の指導はなく、病院への問い合わせもしなかった。

 男性は自らの判断で睡眠導入剤の服用量を減らしたが、自宅には飲みきれなかった三百錠近い残薬がある。男性の長男が調剤薬局に問い合わせたところ、薬剤師から「一晩に二種類の薬の服用は、薬剤師として止めるべきだった」などと説明を受けたという。調剤薬局の責任者は本紙の取材に「取材は全てお断りしている」と話した。

 「同じ(薬効の)薬が処方されていたら、薬剤師には『これは同じだから、こういう飲み方をしてください』と説明してもらいたい。素人には、わかんねえんだから」。男性はそう訴えた上で言う。「もう必要のない薬は飲みたくない」

◆転倒、機能障害など増加おそれ

 厚生労働省が昨年五月にまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針」によると、ポリファーマシーは単に服用する薬剤数が多いことではなく、薬の有害事象のリスクが増えたり、飲み間違いや患者の治療意欲の低下が起きる状態を指す。

 何種類以上を「多剤とするか」の定義はないものの、「有害事象は薬剤数にほぼ比例して増加し、六種類以上が特に有害事象の発生増加に関連したというデータがある」とする。

 東京大学医学部付属病院老年病科の研究チームが一九九五〜二〇一〇年に入院患者約二千四百人を調べたところ、服用薬が一〜三種類の場合、有害事象の発生頻度は6・5%だったが、服用数が増えるごとにおおむね頻度は上がり、十種類以上は13・9%だった。

 この問題に詳しい「やわらぎクリニック」(奈良県三郷町)の北和也院長も「五〜六種類以上の薬を飲んでいる場合、転倒や機能障害などのリスクが上昇する」と指摘。睡眠導入剤についても「漫然と投与されているケースがある。長らく使用していると、減薬するのに苦労する」と解説。

 一方で「単に薬剤の数だけで、薬の多い・少ないを判断するのは難しい。多くの疾患を抱える患者の場合、適切な処方の結果、七、八剤を処方されるケースもある」とし、「まずは医師に相談し、薬を調整することが大切だ」と訴えた。

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