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【社会】

反社に貸し付け 後絶たず 預保などの債権買い取り 元本85億円

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 暴力団組員ら反社会的勢力(反社)と金融機関のつながりを断つため、認可法人「預金保険機構」(預保)と子会社の整理回収機構(RCC)が2012年度から始めた反社債権買い取り事業で、昨年度までの7年間に金融機関から持ち込まれた債権の元本は85億円に上った。元本の約1割で買い取ったが回収できたのもほぼ同額で、債務者が返済に応じていない実態が浮かび上がった。(藤川大樹、福岡範行)

 反社債権は、銀行やクレジット会社が暴力団組員やフロント企業、総会屋などに融資し、回収が困難な債権を指す。地方銀行が最も多く、次いでクレジット会社、信用金庫・組合と続いた。

 貸し付けやクレジットカードの契約の際、金融機関は相手が暴力団関係者でないことを本人に確認する「暴力団排除条項」を盛り込んでいるが、身分を偽るケースが少なくなかったという。

 組員らはクレジットカードを取得したり、自動車ローンを組んだりしていた。

 RCCが買い取った債権は、債務者の大半が暴力団組員や元組員、準構成員ら。旧山口組が最も多く、稲川会、住吉会と続いた。

 銀行や信金などの反社債権は預保で買い取りを決め、RCCが買い取る。一四年からはRCCがクレジット会社や貸金業者から債権を直接買い取る制度も開始。両制度で昨年度までに買い取った債権は七百九十五件、元本は八十五億四千六百万円に上った。

 多くの債権は貸し付けた相手に収入や担保がないため、預保とRCCは反社債権を元本の一割程度の八億四千七百万円で購入。債務者との返済交渉や民事訴訟などを通じて回収にあたったが、差し押さえる財産がないケースが多く、回収額は購入額とほぼ同額の八億三千二百万円にとどまった。

 一方、反社債権の買い取りには厳しい審査があり、債務者が暴力団組員や準構成員、暴力団を離脱してから五年以内が対象。「半グレ」と呼ばれる勢力のように明確に反社債権と認定できない「グレー債権」が増えており、RCC幹部は「金融機関が反社債権だと思っても、グレー債権は制度上買い取れない」と話している。

◆暴力団排除条項 機能せず

 各都道府県で二〇〇九〜一一年に暴力団排除条例が制定されて以降、金融機関などは契約書に暴力団関係者でないことを確認する「暴力団排除条項」を盛り込んでいるが、十分機能していない。

 金融機関やクレジット会社は契約の際、本人への聞き取りや業界のデータベース、全国暴力追放運動推進センターへの照会で、取引相手が暴力団関係者かどうかを調べている。

 RCC幹部は「銀行や信用金庫が暴力団関係者に新規で融資する例はほぼなくなった」とする一方、「クレジット会社や貸金業者は審査が甘い。虚偽の内容で審査をくぐり抜ける例も少なくない」と指摘。暴力団組員が妻子らにクレジットカードを取得させ、自分で使うケースもあるという。

 あるクレジットカード会社の担当者も「養子縁組などで氏名を変えたり、虚偽の申し込み内容により、暴力団関係者と見抜けない可能性はある」と認める。

 RCCによれば、最近持ち込まれた反社債権の半数近くは契約書に暴排条項が入っており、暴力団関係者が身分を隠して取引をした場合、詐欺罪にあたる可能性がある。

 その一方で、暴力団を脱退したある元組員は「暴排条項は暴力団離脱者の社会復帰を妨げている」と話す。暴力団を抜けても五年間は銀行口座やクレジットカードを作れない暴排条項の「五年ルール」があり、就職探しに影響が出るという。「出所後は一般企業に勤め、犯罪もしていないのに厳しい」と嘆く。

 警視庁の幹部は「五年たっていない場合でも、まっとうに生活している元組員であれば、銀行と交渉して口座をつくるケースはある」と話し、元組員らの更生支援の相談に応じている。

<整理回収機構(RCC)> 1990年代に破綻した住宅金融専門会社(住専)7社の不良債権の回収にあたった住宅金融債権管理機構が母体となり、99年に設立された。預金保険機構が100%出資する。破綻した金融機関や住専資産の整理回収や、一般の金融機関からも不良債権を買い取り、回収している。

 

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