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【社会】

大学入学共通テストに食い込んでるベネッセってどんな会社?

ベネッセコーポレーション本社=岡山市北区で

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 2020年度の大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入延期を巡り、にわかに注目されているのが、実施団体の一つで「進研ゼミ」の通信教育事業で知られるベネッセだ。子会社は国語・数学の記述式問題の採点も委託されている。国会の参考人として役員が出席したほか、元文部次官らが関連団体の要職に就いていたことも分かった。どんな企業なのか。(安藤恭子)

◆英語民間試験の実施団体に元文部次官ら天下り

 六日の衆院予算委員会で明らかになったのは、ベネッセと共同で検定試験「GTEC」を行っている一般財団法人「進学基準研究機構」の役員構成。理事長に旧文部省元次官の佐藤禎一氏、参与に元国立大事務局長の阿部健氏が就いていたが、十月に辞職したという。

 ベネッセは中期経営計画で一八年度、四千三百九十四億円だったグループ売上高を、二〇年度に五千億円とする目標を掲げている。計画では「教育・入試改革は最大の事業機会」「大学入学共通テストの民間検定の一つに『GTEC』が採用されたのは大きな転機」と期待を寄せている。

◆1955年、前身の福武書店を創業

 前身は一九五五年に故福武哲彦氏が岡山市で創業した「福武書店」。社員六人で生徒手帳などを製作していた。地元向けの模擬試験も始め、六九年、後に「進研ゼミ」となる高校生向けの通信講座を開始。全国展開し、中学生、小学生にも拡大した。九五年に社名をベネッセコーポレーションに変更。現在、グループの従業員は二万人を超える。

参考人として意見を述べるベネッセコーポレーションの山崎昌樹学校カンパニー長(左から2人目)=5日、衆院文部科学委員会で

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 中学受験指導者の金広志氏は「塾に行けない地方の子でも、双方向の通信添削システムで学校の勉強を補完できる。廉価で画期的な教育の在り方を提供した」とその歩みを評価する。

◆80年代発行の文芸誌「海燕」で小川洋子さんら輩出

 八〇年代に発刊した文芸誌「海燕」でも知られる。当時新人だった作家の小川洋子氏や吉本ばなな氏、島田雅彦氏らを輩出。「福武文庫」で海外小説の翻訳本なども手掛けたが、九〇年代後半に文芸事業から撤退した。別の出版社の編集者は「ベネッセと名を変えたころから、会社も変わってきたのでは」とみる。

◆90年代に社名変更を機に事業を多角化

 子育て情報誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」や、六歳までの通信教育「こどもちゃれんじ」も開始。少子化の中、英語教室「ベルリッツ」や介護事業を展開し、いわば「ゆりかごから墓場まで」(金氏)と言える多角化を図った。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の業務委託を受けるなど、国との関係も深めてきた。

◆2014年の個人情報流出が転機?「生き残りかけ国と関係」

 金氏は、一四年の個人情報流出事件が転機となったとみる。ベネッセは流出した情報は推計約二千八百九十五万件と発表。「生年月日や住所、電話番号などが第三者に漏れて、大きな不安を感じている」とする顧客の集団訴訟も起きた。

 金氏は「生き残りをかけて国の教育・入試改革に加わる一方、政治家からみても実績がある会社は限られている。両者が寄り掛かる形で関係が深まったのだろうが、往時の福武の企業理念を知る立場としては残念だ」と話す。

◆政治家と企業の癒着、疑われる状況よくない

 文部科学省OBの寺脇研京都造形芸術大客員教授も「全国共通テストの受託経験もあり、英語検定試験の導入が急がれる中、ベネッセならできるという感覚もあっただろう」と述べる。

 「政治家主導の教育・入試改革と新自由主義的な発想から、英語民間検定試験の導入が決まった。李下に冠を正さずで、政治家と企業の癒着が疑われる状況は良くない。地域や費用の『不公平感』の強い民間検定試験の導入はやめ、大学入試センターに問題作成業務を戻してはどうか」

(2019年11月9日朝刊「特報面」に掲載)

 

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