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【社会】

幻の東京五輪マラソンコースを巡ってみた ミスト付きベンチ、オブジェ…残った「遺産」

五輪のマラソンを機に雷門前に設置された竹製のオブジェ。朝顔のつるを絡ませ、選手と沿道の観客を楽しまる計画だった=いずれも北村彰撮影

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 急転直下で札幌開催が決まった東京五輪のマラソン。都内の名所を巡る42・195キロは、テレビや会員制交流サイト(SNS)を通じて世界に発信され、格好の東京のPRになるはずだった。沿道には猛暑対策や「おもてなし」のための設備が点々と…。関係者の複雑な胸中と一抹の寂しさをかみしめ、幻となったコースを見つめた。 (加藤健太)

 いよいよ今月末に完成する新国立競技場がスタートとゴール地点だった<地図1>。「先頭ランナーが戻ってきた時、どれほどの歓声が湧き上がったのだろう」と想像せずにいられない。

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 最初のカーブを曲がった左手には、新宿区が今年九月に改修した富久町公衆トイレ<2>が見える。

コース沿道の新宿区富久町にある改修された公衆トイレ

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 古書店が集まる神保町は選手が三回通過する人気の観戦スポットだった。交差点の一角にはミストシャワー付きの木製ベンチ<3>。観客の暑さ対策で、地元商店会「南神(なんじん)実業会」が九月に設置したばかりだった。高山肇会長(72)は「残念な結果になったが、パラリンピックのマラソンは予定通りここを通る。気持ちを立て直して応援したい」と前を向いた。

神保町交差点に設置されたミストシャワー付きベンチ

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 日本橋も三度通過するポイントだった<4>。選手がここを駆け抜ける光景は、五街道の起点として多くの人が往来した江戸時代と重なり、東京の歴史を知ってもらう機会になっただろう。

日本橋は計3回通過するポイントだった

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 雷門を真正面にとらえ、東京スカイツリーに最も近づく浅草<5>は、外国人選手にとって「これぞ日本」の風景だったはずだ。この日も外国人観光客でごった返していた。コロンビアの学生マニュエル・バスティダスさん(22)は「マラソンだけ東京を離れるのはフェアじゃない」と首をかしげた。

 雷門の手前で、台東区がマラソンに合わせて設置した朝顔の花がモチーフのオブジェが目を引いた。こちらも九月にお披露目したばかり。担当職員は「五輪だけが整備の目的ではないので」と平静を装いつつも、「時間をかけて準備してきたのに…」と本音をポロリ。

雷門前の竹製のオブジェ

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 下町を後にした選手は再び都心に向かい、銀座や東京タワー、皇居へ。最終盤、平たんだったコースは一変する。男子代表に内定した中村匠吾選手(27)は代表選考会で「ラスト八百メートルの上り坂が間違いなくポイントになる」と警戒していたのだが…。

 最後の難所を乗り越えた先に新国立が待っていた。競技場近くの「日本オリンピックミュージアム」に来ていた大阪府八尾市の公務員藤津朋代さん(33)は「マラソンの他にも東京以外でやる競技があるので何が何でも東京でとは思わない。五輪を通じて日本の良いところを感じてもらうのが一番ではないか」と話した。

東京五輪のマラソンでスタートとゴールになる予定だった新国立競技場

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◆本番後に代わりのレース開く予定だが…

 世界のトップランナーが走るはずだった東京五輪のマラソンコース。東京都と国際オリンピック委員会(IOC)は、このコースを使って、五輪後に「セレブレーション(祝福)マラソン」を開催する方向で調整している。ただ現時点で時期や規模、費用負担は未定。開催に期待する声がある一方、五輪マラソンを逃した「がっかりマラソンだ」との冷ややかな声もある。 (岡本太)

 セレブレーションマラソン案は1日、IOCのバッハ会長が小池百合子都知事にメールで提案。五輪マラソンの札幌移転に強く反対していた小池知事に示されたいわば「誠意」で、小池知事は「真摯(しんし)なメッセージだ」と評価し受け入れた。

 ただ関係者からは「世界中から注目される五輪マラソンとは比べものにならない」と厳しい意見も。都庁内には「がっかりマラソンにすればいいのに」との声さえ漏れる。

 IOCは世界の強豪選手から市民ランナーまで広く参加できる大会を想定しているが、東京では毎年3月に東京マラソンもある。新たなマラソン開催は費用や警備など課題が多く、早くも「東京マラソンの名前を換えてやるのでは」との見方が出ている。

(11月15日「TOKYO発」面に掲載)

 

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