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【社会】

<くらしデモクラシー>「トリエンナーレ」文化庁補助金不交付 抗議で外部委員辞任、林教授

インタビューに答える上智大の林道郎教授=東京都千代田区で

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 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に対する文化庁の補助金不交付決定を巡っては、文化庁の事業に携わる三人の委員が相次いで辞任し、抗議の意思を表明した。このうち、日本の現代アートの国際評価向上を目指す「文化庁アートプラットフォーム事業」を運営する「日本現代アート委員会」副座長だった林道郎・上智大教授(美術史)に、不交付の国際的な影響などを聞いた。 (聞き手・望月衣塑子)

 −なぜ文化庁の事業の委員を辞任したのか。

 文化庁は「手続き上の不備」が理由だというが、その説明は極めて曖昧で、誰がどのように不交付を判断したかを示す議事録さえない。不交付決定が報じられた九月二十六日、複数の文化庁職員に問い合わせたが、彼らも理由や決定を把握していなかった。政治的な意向が強く働いたと感じる。せめて第三者である有識者に議論させた上で決めるべきで、極めて異常だ。

 −海外の反応は。

 事業に協力してくれていた海外の芸術家やキュレーター(学芸員など展示の企画や運営などに携わる専門職員)、日本研究に従事する学者などから「なぜ一度承認された補助金が取りやめになるのか」「なぜ政府が介入するのか、理解しがたい」といった声が次々に上がっている。

 本来、芸術の持つ自由は多様性をはらむものであり、先鋭的なテーマにも切り込めるものでなければならない。政治介入で妨げられてはならない。それが芸術表現の常識なのに、今回の決定で、世界からは「日本では、政府のお眼鏡にかなう芸術品しか展示できない」という目で見られるようになる。

 −そんなにやりたいなら自分の金でやるべきだという意見がある。

 例えば、現代美術の国際展として極めて重要なドイツの「ドクメンタ」は、ナチス時代の反省から始まったもので、非常に政治色が強く、権力批判や移民問題などを扱う作品であふれているにもかかわらず、州や市がずっと資金援助をしている。不交付決定はこれとは逆に、これまで積み上げてきた国際的な日本の信用を深く損なう行為だ。

 −文化庁の宮田亮平長官は不交付を決裁していないと国会答弁した。

 漏れ聞こえてくる声によると、宮田長官に不交付決定撤回の意思を示してほしいと言い続けた人も文化庁にはいたそうだが、どうして応えないのか。芸術家でもある長官として、今こそ政治の介入を許さない姿勢を明確にすべきなのに。イルカをモチーフにした宮田長官の金工作品を閣僚らが私費で買い上げ、天皇陛下の即位を祝う内閣一同の献上品にしたと聞いた。表現の自由への政治介入を黙認した長官として歴史に名を刻んでしまった。

<はやし・みちお> 1959年生まれ。上智大国際教養学部教授(近現代美術史・美術批評)。文化庁の「アートプラットフォーム事業」を運営する「日本現代アート委員会」副座長を、補助金の不交付決定が報じられた後、9月30日付で辞任した。同事業は、日本における現代美術の持続的発展と国際的な理解の推進を目指し、国境を超えた関係者のネットワーク形成、翻訳事業、データベース構築などに取り組むもの。

 

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