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【社会】

<取材ファイル>日本貿易保険、不正入札で33億円損失 政府出資会社、甘い内部統制

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 政府が全額出資している特殊会社「日本貿易保険」(東京都千代田区)が、不正入札事件で三十三億円の損失を出した。当時の男性顧問(73)が入札で業者に便宜を図ったことが原因だが、同社は社内の準備金を減額することで巨額の損失を処理。税金が投入され実質的な税制優遇も受けている同社のこの対応に、専門家は「内部統制に甘さがあった。民間企業なら経営陣に損害賠償請求訴訟が起きる事案」と指摘している。 (井上真典)

 日本貿易保険は、日本企業の輸出入や海外投融資で、戦争や災害が発生した場合に損失を補償するなど、民間で引き受けられない保険をカバーしている。

元顧問の不正入札事件で、33億円の損失を計上した日本貿易保険が入るビル=東京都千代田区で

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 不正入札は、保険の申し込みや審査をする社内システム開発の業者選定で起きた。入札で実質的に権限を持っていた元顧問が二〇一七年三月、情報セキュリティー会社(千代田区)に審査基準を漏らし、提案書の一部などを代筆。同社が約五十億円で落札した。

 入札に不正があったとの匿名情報をきっかけに、警視庁捜査二課は今年八月、元顧問を公契約関係競売入札妨害容疑で逮捕、東京簡裁は九月に罰金百万円の略式命令を出した。

 捜査関係者や同社関係者らによると、元顧問は大手IT企業出身。日本政策金融公庫でも顧問としてシステム開発の入札に関わり、一五年に日本貿易保険の当時の社長が迎え入れた。元顧問ほど専門知識のある社員がおらず、入札で権限を握っていた。

 捜査関係者は「元顧問はこの世界では名の知れた人物。ちやほやされ、接待も受けていた」と話す。日本貿易保険が設置した調査委員会は「社長がシステム開発の担当取締役なので、他の取締役の監視・監督が機能しにくかった」「体制が手薄」などと内部統制の不備を指摘していた。

 不正入札の発覚により、日本貿易保険はセキュリティー会社との契約を解除。しかし、セキュリティー会社は既に一年半にわたり、システム開発のため最高で百人超のシステムエンジニアを使っており、この人件費など関連費用を含めて日本貿易保険の損失は三十三億円に上った。

 不正入札事件ではセキュリティー会社の社員ら三人も書類送検されたが不起訴となっており、同社は「わが社は不正に関与していない」として費用を返還しない姿勢だ。

 日本貿易保険は、将来生じ得る保険の支払いに備え、本業の利益を準備金に積み立てる措置が認められている。このため純利益をゼロにでき、税金はかからない。三十三億円は特別損失として準備金を減額し、補填(ほてん)した。

 日本貿易保険は一八年十月、不正の責任として当時の社長を六カ月間10%の減俸処分(本紙計算で計約八十万円)としたが、社長は今年六月に退職金を受け取り任期満了で退任した。

 明治大の小俣光文教授(会計監査論)は「民間企業なら、社長ら役員を相手取り会社に損害を弁済するよう求める株主代表訴訟が起きる事案だ」と指摘。「日本貿易保険は政府が全額出資し、税制優遇も受けており、財産はいわば国民から負託されたもの。民間以上の厳しい責任が問われるべきだ」としている。

<日本貿易保険> 企業の積極的な海外展開を支援する目的で2001年に設立。17年4月、独立行政法人から特殊会社に移行した。18年度の引き受け実績は約6・3兆円、支払った保険金額は約335億円だった。準備金は9080億円(今年3月末現在)。

 

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