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【社会】

途上国支援も「若者離れ」 青年海外協力隊の応募者、25年で6分の1に

 発展途上国支援といえば青年海外協力隊。その応募者が激減している。ピーク時の6分の1の約2000人とされ、途上国からの支援要請に十分応えられていないという指摘もある。激減の背景に何があるのか。 (稲垣太郎)

◆海外より国内の被災地ボランティア

2000年6月、青年海外協力隊の派遣前訓練を終え、終了証書を受け取る隊員たち=東京都渋谷区で

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 「知ってるけど興味ない。何をやっているかは詳しく知らないし、就職したら忙しくなるから」。若者は協力隊についてどう思っているのだろうか。しばしば顔を合わせる東京都葛飾区の大学四年の女性(22)に聞くと、こんな返答だった。

 豊島区の大学三年の女性(20)も「私は発展途上国が怖いから行く人はすごいと思うけど、行きたいとは思わない。就職して早く安定したい」と語った。港区の大学二年の男性(21)は「海外にボランティアに行くぐらいなら、国内の被災地の支援に行く」。という考えだった。

 協力隊は政府開発援助(ODA)として国際協力機構(JICA)が実施するボランティア事業。一九六五年の発足以降、延べ四万人超の隊員をアフリカやアジア、中南米などの途上国に派遣してきた。その協力隊への若者離れが進んでいるというのだ。

◆94年度は1万人超 昨年は2千人

 指摘したのは「青年海外協力隊の現状と課題―参加者拡大と有効活用の課題を中心に―」という題の論文。筆者は、参議院第一特別調査室の藤崎ひとみ氏。今月一日発行の参議院の調査情報誌「立法と調査」に掲載されている。

 それによると、応募者数は九四年度の一万一千八百三十二人をピークに、近年は年間二千〜三千人で推移。二〇一八年度は二千三十人で合格者数は九百四十六人。途上国から要請のあった二千六百六十七人の三分の一ほどだった。

 藤崎氏が「日本の『顔の見える開発協力』として開発途上国の発展に貢献している」と記した通り、協力隊は長年、成果を上げてきた。なぜ「不人気」になってしまったのか。

◆ネットで途上国が“身近”に

 「事業が発足して間もないころは、海外にボランティアに行くなら協力隊しかなかったのだろう。途上国の情報も、地図を広げて大体この辺りじゃないかという程度で、遺書を残して旅立ったという先輩もいた」。ある協力隊OBの男性(48)は話す。

 ところが時代は変わった。途上国の情報もインターネットで入手できる。ネット上の動画で、任地の映像まで見ることができる。そして、海外へ行くのも協力隊が発足した時代よりはるかに簡単になった。

 男性は「海外で活動するにも、非政府組織(NGO)など選択肢が増えた。海外の中学校や高校に学生が教えに行くプログラムがある大学もある。留学も一般的になった。大組織のJICAの協力隊ではなく、NGOでチャレンジしたいと思う人が増えているのではないか」と推測した。

◆そもそも海外志向がなくなった?

 では、NGOを志す人材は増えているのだろうか。関西のNGOで人材育成を担当する男性職員(41)は「若い世代の人の海外志向がなくなっているという肌感覚がある」。こちらも状況は厳しい。職員は「ネットの普及で、日本にいても海外とつながれる環境が整いつつある」と、やはりインターネットが影響していると推測する。

 さらに、少子化が進む一方で、若者の就職状況は改善している。こんな事情で、海外支援ボランティアを志す人はさらに減りかねない。しかし、NGOの男性は応募者の減少を嘆くことはないという考えだ。

 男性は「協力隊の募集説明会に出席して十分に理解し、本気で取り組みたいという人だけが応募しているのだろう。途上国に貢献し、日本に戻って社会に還元することが重要で、そのためには派遣する人の質を保つ必要がある」と語った。

 

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