東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<税を追う>柔道整復師 不正請求横行 「白紙の小切手」水増し

うその負傷名が書かれた療養費支給申請書

写真

 全国の接骨院や整骨院で約三万八千五百件もの莫大(ばくだい)な療養費の不正・不当請求が明らかになった。今回明らかになったのは二〇一七〜一八年度の二年間に企業の健康保険組合に請求があった分だけ。柔道整復師による不正請求は以前から指摘されており、国民健康保険(国保)や全国健康保険協会(協会けんぽ)などにも調査の対象を広げると、さらに不正請求が膨らむのは確実だ。 (藤川大樹、鷲野史彦)

 アンケートを行った健康保険組合連合会(健保連)には、全国から不正請求の具体的なケースが多く寄せられた。

 「どこに行っても良くならない 肩こり 猫背 姿勢改善」「チラシご持参の方 初回限定、通常価格7500円が3600円」

 二〇一七年十月、四十代の女性は自宅マンションのポストに投函(とうかん)されたチラシを見て、東京都内の整骨院を訪れた。「体のゆがみのチェックが割引で受けられるとあったので通院した」。女性は後日、健保組合の患者照会にそう説明した。

 整骨院で「これまでにケガをしたところがありますか」と尋ねられ、「二十年ほど前に左手と左足を捻挫した」と答えた。身体のゆがみを調べる施術を受けた後、一枚の用紙を示され、「署名してください」と言われて名前を書いた。

 A4の用紙は右下の署名欄以外は白い紙で覆われていた。後日、健保組合の説明で「療養費支給申請書」だと分かった。負傷名の欄に「左手関節捻挫」「左足関節捻挫」と書かれ、冷やす治療を受けたことになっていた。整骨院は女性から施術代金三千六百円を受け取りながら、うその申請書を作成して健保組合にも二千二百五円の療養費を請求していた。

 女性は健保組合の照会に「今もチラシが投函されている。客をだまして国民健康保険や共済組合などにも不正請求しているのでは」と不信感を口にした。

 柔道整復師は全国で約七万三千人おり、一六年度の療養費は三千六百三十六億円。療養費の九割近くは保険料や税金で賄われている。申請書の点検業者の一人は「不正が疑われる請求は健保組合に連絡するが、申請が大量で、かなり絞られるのが現状。不正請求は氷山の一角だ」と明かす。

 厚生労働省の専門委員会の委員を務める整形外科医の松本光司氏は、柔道整復師が患者に代わって療養費を請求する受領委任制度が、後を絶たない不正請求の温床と指摘する。患者は本来、申請書の内容を確認した上で署名することになっているが、実際は署名だけする「白紙委任」が横行している。

 松本氏は「柔道整復師に白紙の小切手を渡しているようなもので、患者は知らないうちに不正請求の共犯となり、保険料が持ち出されている。本来は患者が毎回金額を確認して申請書にサインすべきで、厚労省は指導を強化すべきだ」と話す。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報