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【社会】

子育てイライラ 8の対話術

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 子どもが言うことを聞かず、ついカッとなってしまう−。そんな親の悩みを解きほぐすための「怒らない対話術」が、全国の子育て支援の現場で関心を集めている。言葉の選び方や子どもと接する姿勢を八つのキーワードでまとめたもの。近年、児童が犠牲になる悲惨な事件が相次ぐ中、親からは「感情的にならずに話せるようになった」と好評で、虐待抑止策としても注目されている。 (太田理英子)

◆参加者「褒めたら子どもに変化」

 「離れた位置で大声を出すのではなく、子どもの近くで目線を合わせて話して」

 十一月末、神奈川県茅ケ崎市の公民館であった講習会。子どもが公園から帰りたがらない場面などを想定し、三歳〜小学生の子どもを持つ母親たちが接し方を学んだ。

子どもが言うことを聞かない場面を想定し、別の行動を促す練習をする参加者ら=神奈川県茅ケ崎市で

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 講師が紹介するのは、「気持ちに理解を示す」ことや、深呼吸などで「落ち着く」といった八つのポイント。「ちゃんとして」などの曖昧な指示ではなく「代わりの行動を示す」ことで円滑なコミュニケーションを図ることができるとして、キーワードを青色の文字でホワイトボードに書いていく。

 逆に、嫌みや質問形式で問い詰めるなどの行為は、子どもの自尊感情や自己肯定感を損なう恐れがあるコミュニケーションとして、赤色で強調した。

 帰宅後に手洗いや着替えをせずに遊びだす場面では、事前に「帰ったら○○しようね」と伝えた上で、できたことを褒めるよう練習した。参加者からは「つい一人で全部させようとしていた」との声が聞かれた。講師は「『ママと一緒にやろう』と声を掛けるのも効果的」と助言した。

 六歳の娘がいるパート円満字(えんまんじ)恭子さん(33)=同市=は「食事中の座り方などをできて当たり前と思わずに褒めるようにしたら、自分から進んでできるようになった」と家庭での変化を実感する。講師の市職員は「親が自分の一言の影響を感じてくれることが何より大事」と話す。

 市は二〇一六年から親向けの講座を年数回開き、年間百人以上が参加。定員が埋まってしまうことも珍しくないという。口コミで評判が広がり、市外でも出張講座を開く予定だ。

◆市川の児相・渡辺所長が発案 全国で活用、定着願う

渡辺直さんは「繰り返し練習して覚えてもらうことが大事」と訴える=千葉県市川児童相談所で

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 怒らない子育てのための対話術を発案したのは千葉県市川児童相談所長の渡辺直(ただし)さん(55)。「子どもをたたきたくないけど、他の方法が分からない」と悩む親たちを多く見てきた経験から生まれた。

 「暴力を禁止するだけでなく、どんな行動をすべきか具体的に伝える方法はないか」。二〇一二年、出張先の高知県から戻る飛行機内で八つのキーワードが浮かび、高知出身の坂本龍馬の「船中八策」にちなみ、「機中八策」と名付けた。

 繰り返し練習できるよう、かるたのようなカードを作製。一六年に全国児相所長会で取り組みを紹介すると、全国から問い合わせが相次いだ。現在はほぼ毎週末、講演活動で全国を駆け回る。茅ケ崎市のように機中八策をアレンジして独自の対話術を編み出す自治体も増え、北海道千歳市や仙台市、埼玉県では子育て支援や児相職員の研修で活用されているという。

 児童虐待防止法などの改正で、親権者のしつけ名目の体罰禁止が明文化された。渡辺さんは「虐待対策は本来、未然防止が重要。非暴力コミュニケーションが広がり、文化として定着してほしい」と訴える。

 

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