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【社会】

元次官、長男殺害認める 検察「家庭内暴力恐れ」 東京地裁初公判

熊沢英昭被告

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 東京都練馬区の自宅で六月、同居していた長男を刺殺したとして、殺人の罪に問われた元農林水産事務次官、熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判の初公判が十一日、東京地裁(中山大行裁判長)であり、熊沢被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で、家庭内暴力を恐れて殺害に及んだと指摘した。

 冒陳で検察側は、殺害された長男の英一郎さん=当時(44)=は、進学した都内の有名私立中学校でいじめを受け、そのころから家庭内暴力が始まったと指摘。英一郎さんは発達障害と診断され、「人付き合いが苦手だった」とした。

 高校卒業後、一人暮らしをしていた英一郎さんは、事件一週間前に実家に戻ってきたという。熊沢被告がごみの捨て方について注意すると激高し、暴力を振るわれたことで熊沢被告は殺害を決意。妻宛に「これしか方法がない。英一郎を散骨してください」と置き手紙を書いたという。殺害時の状況については「供述があいまいではっきりしない」と述べるにとどまった。

 一方、弁護側は「英一郎さんから殺されると思い、とっさにやむをえず犯行に及んだ」と訴えた。

 起訴状によると、熊沢被告は六月一日、自宅で英一郎さんの首などを包丁で多数回刺し、失血死させたとされる。

◆妻に手紙「これしか方法ない」

 元官僚トップは、なぜ長男を刺殺したのか−。十一日にあった熊沢英昭被告の初公判。上下黒のスーツに白いシャツ、青いネクタイ姿で、やや背を丸めながら入廷した熊沢被告は、裁判長から起訴内容について問われると、「間違いありません」と落ち着いた口調で答えた。

 検察側の冒頭陳述などによると、長男の英一郎さんは中学生だった約三十年前、いじめを受け、家庭内暴力が始まった。熊沢被告は当時、農水省で砂糖類課長などを務めていた。

 英一郎さんは大学卒業後、仕事をしていた時期もあったが、近年は定職に就かず、東京都豊島区の一軒家で一人暮らしをしていた。今年五月二十五日、ごみ出しなどを巡って近隣住民とトラブルになり、実家に「戻りたい」と電話。その日のうちに両親の元に戻り、熊沢被告らと再び暮らし始めた。

 同二十六日、熊沢被告がごみ出しについて英一郎さんに注意したところ、暴力を振るわれたという。熊沢被告は、六月や八月に予定していた妻との旅行の予約をキャンセルし、インターネットで「殺人」「量刑」などのキーワードを検索。妻には「これまで尽くしてくれてありがとう。これしか方法がない」などと手紙を書いたとした。

 そして六月一日、自宅に隣接する小学校で運動会が開かれ、児童らの歓声を聞いた英一郎さんは不機嫌になったという。熊沢被告は英一郎さんから「殺すぞ」と言われた後、包丁で英一郎さんの首や胸など三十カ所以上を刺し、自ら「息子を刺し殺した」と一一〇番した。

 事件四日前には、川崎市で私立カリタス小学校のスクールバスを待っていた児童ら二十人が殺傷される事件が発生していた。自殺した犯人は、ひきこもりがちだったと報道されていた。

 「川崎市の事件のように、子どもに危害を加えてはいけないと思って殺した」。熊沢被告は逮捕後の警視庁の取り調べに、こう動機を語ったという。周囲にSOSが発せられないまま、事件は起きた。 (小野沢健太)

 

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