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【社会】

ひきこもりの中高年の親へ プライド捨てて周囲に助けを求めて

ひきこもりの息子がいる70代男性は、熊沢被告に「事件前に周囲に助けを求めてほしかった」と語る=東京都内で

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 最悪の結果を防ぐ手だては本当になかったのか−。ひきこもりの中高年の子どもがいる親たちは、熊沢被告の公判の行方を見守っている。「なぜ誰かにSOSを出せなかったのか。二度とこのような事件が起きないためにも、公判で胸の内を明かしてほしい」と願う。 (小野沢健太)

 「バターン!」。十月初めごろ、都内の七十代男性が自宅を出ようとしたとき、家の中から大きな音がした。二十年ほど前からひきこもっている三十代の息子が暴れてしまったようだ。

 「またか…」。息子は数カ月に一度、怒りを爆発させてドアを蹴ったり、物を壊したりする。どうして怒りのスイッチが入るのか、いまだに分からない。

 小学生の頃はサッカーやプールを楽しむ子だったが、中学で学校になじめず不登校に。卒業後はアルバイトをしたこともあったが長続きしなかった。今は家でもめったに顔を合わせず、会話もない。

 「私と妻は年を取るばかり。今後あの子は生きていけるんだろうか」。男性は何人もの医師に相談したが、状況は変わらなかった。

 三年半前、同じ境遇の家族の集まりがあることを人づてに知った。参加してみると、似た思いを抱える人ばかり。悩みを打ち明けるうちに「気持ちを吐き出すと楽になる」と知った。

 息子が暴れると暗い気持ちにはなるが、子の命を絶ってしまった熊沢被告を理解することはできない。「プライドを捨てて周囲に助けを求めてほしかった。子どもだけでなく親も孤立してしまっては、正常な判断ができなくなる」

 静岡県内の家族会「いっぷく会」は、「ひきこもりの子を支える親を孤立させないよう、居場所づくりが何よりも大切」という理念で、定期的に交流会を開いている。会長の中村彰男さん(70)は次男(32)が長年ひきこもっているが、息子から暴力を受けたことはないという。「それぞれ状況は全く違う。ひきこもりは危険と思う人がいれば、それは誤解だ」と強調する。

 熊沢被告は外部に頼らず、孤立を深めていったとされる。「相談できる相手がいれば、事件は起きなかったのではないか」と中村さん。「真の背景を法廷で説明してほしい」

 

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