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【社会】

多摩川20カ所で浸食 台風19号で決壊、差し迫った状況

計画高水位を超えた10月12日夜の多摩川の東京都大田区田園調布と調布市石原の観測所からの映像=京浜河川事務所提供

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 十月の台風19号に伴う大雨により、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川では、護岸などが少なくとも二十カ所でえぐられたり崩れたりする被害があったことが、国土交通省・京浜河川事務所の調査で分かった。水位は多くの地点で過去最高を記録。「この状態が続けば、いつ決壊してもおかしくない状況だった」(同事務所)といい、甚大な被害を招く多摩川で、氾濫(はんらん)や決壊が差し迫った状況だった。 (安藤淳)

 京浜河川事務所によると被害は広範囲に及び、東京都調布市石原では十月十二日深夜、氾濫危険水位よりも高く、堤防が耐えられる最大値を示す「計画高水位」を三十九センチ超える六メートル三三を記録。堤防上端まで約一メートルに迫り、水位観測装置が流出した。大田区田園調布でも計画高水位を四十六センチ上回った。多摩川で計画高水位を上回ったのは、多摩川中下流域が国管理になった一九六六年以降、初めて。

 また、大田区で桟橋が流出、護岸が崩壊し、多摩川の水が市街地に漏れる「漏水」も確認。川崎市多摩区では二百メートルにわたって護岸が浸食された。東京都狛江市では三百四十メートルにわたって、増水時に水が流れる高水敷部分が削り取られる「洗掘(せんくつ)」が起きていた。府中、多摩市などでも同様の浸食や洗掘が発生した。「それぞれ堤防のり面の損傷は確認されていないものの、増水が続けば浸食などが増大し危険な状況だった」(同事務所)とする。東京都が管理する多摩川上流でも護岸が二カ所崩れるなど計六カ所で被害が出た。

 多摩川は首都圏を流れる一級河川の中では、勾配が比較的急な河川。流域では十一日の降り始めから総雨量は東京都檜原村で最大六五四ミリに達し、東急田園都市線二子玉川駅近くの多摩川の堤防未整備区間で、住宅地へ越水した。支流の丸子川や平瀬川などが氾濫し床上浸水などの被害が出た。

 同事務所では、最高レベルの警戒態勢である「非常体制」が十二日午後三時十分から十三日午後七時まで続いた。担当者は「多摩川は都市化が進んで川を広げたり遊水地の整備は難しいが、今回並みの雨を安全に流せるよう、堤防かさ上げや河道掘削などの対応を図りたい」と話している。

◆治水削られる予算 池内教授に聞く

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 水災害リスクマネジメントが専門の池内幸司・東京大大学院教授に治水の現状と課題を聞いた。

 台風19号は記録的豪雨が上流域を中心に降ったため、国管理の大河川でも厳しい事態になった。同様の雨量なら、全国どの河川でも今の治水レベルでは持ちこたえるのは厳しい。

 大河川は決壊した場合に大きな経済損失が予想される。ただ近年の治水予算は一九九七年度の六割程度。行財政改革で毎年のように削られた。都道府県管理の河川はもとより、国管理の川でも樹木伐採ができず土砂が堆積するなど、河川管理もままならない状況だ。

 河川整備は効果がはっきり分かる道路と違い、注目されるのは完成した時ではなく、決壊して批判を浴びる時。日本の人口の多くは欧米と異なり、河川の堆積作用によって形成される沖積平野に住んでおり、水害は宿命。昔の武将も治水投資をしてきた。治水を後回しにすべきでない。

 浸水想定地域では伊勢湾台風で被害を受けた名古屋市の臨海部防災区域建築条例のように二階建て以上に制限するなど対策を取ることも必要。企業や役所、病院などの重要施設の水害対策も進めるべきだ。

 

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