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【社会】

<税を追う>補正 9割「兵器ローン」返済 防衛費、米国製の輸入急増で

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 政府が十三日に閣議決定した二〇一九年度の防衛省の補正予算案四千二百八十七億円のうち、ミサイルや戦闘機などの「兵器ローン」の返済(歳出化経費)が三千八百七億円と89%を占めたことが分かった。F35戦闘機など米国政府の「対外有償軍事援助(FMS)」を利用して輸入する米国製兵器の調達費は一千七百七十三億円(47%)とほぼ半分を占め、急拡大する米国製兵器の輸入が防衛費を押し上げていることが鮮明になった。 (荘加卓嗣)

 二〇年度の当初予算で賄いきれない兵器ローンの返済の一部を補正予算で前倒し計上しており、来年一月からの国会では防衛費の全体像を矮小(わいしょう)化しているとの批判が強まるのは必至だ。

 ローン返済額の大きなものは、地対空ミサイル・パトリオット(PAC3)の改修費七百八十九億円、戦闘機F35Aの取得費六百五十二億円、イージス艦の戦闘システムの調達費三百九十三億円など。

 このうちF35Aやイージス艦搭載品はFMSに基づき米国から輸入する。代金を分割で支払った後に納入される。米国製の空中給油・輸送機KC46Aの取得費百七十二億円も補正予算に盛り込まれた。

 防衛省の補正予算は東日本大震災があった一一年度(三千三百七十八億円)を除き、旧防衛庁から省に昇格した〇六〜一〇年度まで一千億円を超えたことはなかった。それが第二次安倍政権発足後の一二年度から千百億〜二千二百億円台と増え、米国製兵器の導入が顕著になった一八年度と一九年度(要求額)は一気に四千億円を超えた。

 防衛省は二〇年度当初予算で過去最大の五兆三千二百二十二億円を要求。兵器ローン残高も五兆四千九百四十二億円と最高額となりうちFMS関連は一兆六千六十九億円に上っている。

◆納期 早くできる

<防衛省会計課の話> (ローン返済のための)歳出化経費として計上したものは緊要性があると考えている。安全保障環境が悪くなる中で、国内の業者にもFMSについても、早めに代金を支払うことで、防衛装備品の納期までのスピードが数カ月単位で早くなり、早期に納入されるのは大きい。

◆安倍政権で定着

<軍事評論家・前田哲男さんの話> 補正予算でのローン支払いは第2次安倍政権で定着した。地上配備型迎撃システムイージス・アショアの導入も最初は補正で決めるなどしており、補正での対応は、こうした米国からの兵器購入増加を目立たなくするためのトリックだ。

◆取材班から 「爆買い」安全保障にならず

 防衛省が補正予算を「第二のサイフ」として使い、二〇二〇年度の当初予算で足らない兵器ローンの返済を振り分けていた。二〇年度の実際の防衛費は概算要求よりも三千八百億円多いことになり、当初予算を少なく見せるトリックだ。

 安倍政権で防衛費は聖域のように増え続けるが、米国製兵器の輸入拡大で、ローンを返しても借金が増え続ける自転車操業に陥っている。背景には兵器の購入を露骨に求めるトランプ米大統領の戦略がちらつく。こうした状況に自衛隊の現場でも疑問の声が広がる。

 例えば離島奪回を想定して配備を進める米国製の水陸両用車「AAV7」。一両約七億円、五十二両の導入は取得費だけで三百五十億円超の買い物だが、陸自が導入したのは一九九八年型の“年代物”だ。

 陸上自衛隊のある幹部は「米本国で旧式になりつつあるのに、どうして買うことになったのか」と首をかしげる。省内からは「自前で開発するよりは安上がりですむ」という説明をよく聞くが、そもそもの必要性について思考の硬直はないだろうか。別の隊員からは「高い米国製兵器を買うなら老朽化する隊舎を改善してほしい」という切実な声も聞く。

 防衛省は今回の補正予算で災害派遣時の簡易ベッドなどに八億円を計上。隊員の勤務環境の改善にようやく本腰を入れる。海自のある幹部は「船も飛行機も、大事なのは結局それを動かす人」と話す。火の車の予算で、無理をして兵器を買いそろえることが安全保障にはならないはずだ。

 

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