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【社会】

相模原殺傷 8日初公判 差別なぜ、被告の口から

津久井やまゆり園の前で献花する太田顕さん=12月26日、相模原市で

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 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で二〇一六年七月、入所者ら四十五人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元施設職員植松聖(さとし)被告(29)の裁判員裁判が八日に始まる。〇四年まで三十六年間にわたり同園で働き、犠牲者十九人のうち八人と面識があった太田顕さん(76)は「なぜ施設の障害者にやいばを向けたのか。差別的な考えはどこで生まれたのか。彼の口から直接聞きたい」と裁判の行方を見守る。

 月命日にあたる先月二十六日。建て替え工事が進む園の前に設けられた献花台で、太田さんは手を合わせながらつぶやいた。「事件を二度と起こさないため、共生社会づくりの手掛かりを探しに裁判に行く私たちの活動を見守ってほしい」

 園が横浜市に仮移転した後の一七年五月から、毎月二十六日に園の前での献花を欠かさず続ける。地元住民らと「共に生きる社会を考える会」を立ち上げ、語り部として大学生や高校生らに事件について説明したり、毎年、事件が起こった七月二十六日に「しのぶ会」を開いたりして、風化を防ごうと力を注いできた。

 太田さんは、被告と自らの共通点に目を向けずにはいられない。同じ園の元職員として「同僚や先輩、利用者から学び、自己研さんしながら少しずつ成長していくのが本来の職員の姿。被告は勤務した三年余りの期間、どのような気持ちで働き、利用者はどう映っていたのか知りたい」と語る。

 もう一つ、園のある千木良地区の住民である点も同じだ。住民と園は日ごろから互いのイベントを通じて交流し、老若男女問わず日常的に触れ合いがある地域。被告と面識はなかったが、「やまゆり園と共に生きるこの地域で暮らし育ってきたのであれば、あのような凶行は絶対にあり得ない」とまだ信じられない気持ちが拭えない。

 「被告が唱える優生思想に屈したくない」という思いから、被告に向き合いたいと言う。事件直後は衝撃が大きすぎて困難だったが、ようやく冷静に対峙(たいじ)できる心境になったのは「差別のない共に生きる社会を地域から実現しなければ」と強く思うからだ。

 犠牲者十九人の「生きたかった思い」も胸に刻み、法廷に足を運ぶつもりだ。 (曽田晋太郎)

 

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