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【社会】

熟練介護の技 VRで学ぶ 入浴ケアなどゴーグルでぐるり

「ケアリアル」を使った研修会で平野真弓さん(右から2人目)から指導を受ける参加者たち=昨年12月、岐阜市で

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 ベテラン介護士の優れた技術を仮想現実(VR)で学ぶ教材「ケアリアル」を、岐阜県大垣市の認知症高齢者らのグループホーム「てんじゅ」所長の平野真弓さん(56)が、映像制作会社と開発した。慢性的に人材が不足し、離職率が高い介護現場。若手や外国人にノウハウを効果的に伝授し、定着を図ってほしいとの思いがある。 (秋田佐和子)

 昨年十二月上旬、岐阜市内の介護施設で平野さんが講師を務めたケアリアルの研修会。若手の介護職員ら約三十人がゴーグルを着け、VRの世界に没頭した。終了後、「介護のやり方をいろんな角度で見られた」「百聞は一見にしかず。とても重要で効果的と思った」などと感想が寄せられた。

 ケアリアルは車いすからベッドへの「移乗」「排泄(はいせつ)」「入浴」「車イス移動」「口腔(こうくう)ケア」「食事」の六項目で構成。平野さんの事業所のベテラン職員が実際に高齢者らを介護する様子を、一項目当たり数分〜十分程度で撮影している。

 高齢者らを支える腕の力の入れ具合、身体の引き寄せ方や間合い、機材の使用法…。受講者は、まるで隣で見たり、自ら介護したりしているかのようなVRならではの臨場感を味わえる。ゴーグルとインターネット環境があれば、手軽に学べるのも特徴だ。

 開発の背景には平野さん自身の苦い経験がある。二〇〇六年に「てんじゅ」を立ち上げたが、離職者が続々と出た。人手は足りず、新人を育成する指導者や時間を確保できなかった。

 教育が不十分な新人が現場に出されると、事故につながる恐れがある。平野さんは「虐待などにつながる危険もある」。近年、企業研修などにVRが活用されていると知り、業界共通の悩み解消に向けた教材づくりを模索。一七年、映像制作会社「ぐる撮る」(同県瑞穂市)代表の舩戸(ふなと)和貴さん(53)に共同制作を持ち掛け、撮影などが始まった。

 施設ごとのオーダーメード型の教材制作にも着手する。介護に使うベッドや入浴機材などは施設により異なるためだ。既に県内の三施設から引き合いがある。

 「介護は人が相手の仕事。人材を育て、笑顔でケアできるようにするのが大切」と話す平野さん。教材制作のための法人を設立し、質の高い教育を業界で普及させるのが次の目標だ。

◆事業所の67%が「人材不足」

 厚生労働省は、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年度末までに、年間で新たに6万人程度の介護人材を確保する必要があると推計。各地で高齢者への虐待も相次ぎ、質の高い介護を提供する人材の育成が急務となっている。

 公益財団法人「介護労働安定センター」が昨年8月にまとめた18年度介護労働実態調査(対象約1万8000事業所、回収率51.6%)によると、介護人材の不足を感じていると回答した事業所は67.2%。5年間で10ポイント以上増加した。

 厚労省によると、18年度の介護施設職員などによる虐待行為は全国で過去最多の621件に上った。前年度比21.8%増で、年々増え続けている。虐待の要因として最も多かったのが「教育・知識・介護技術等に関する問題」で58.0%だった。

 

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