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【社会】

相模原事件初公判 「被告人席で君は幸せか」 被害者で唯一実名の父質問へ

横浜地裁前で報道陣の質問に答える尾野剛志さん。左は妻チキ子さん=8日午前、横浜市中区で

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 差別的な考えにとらわれ、十九人の命を奪ったのはなぜか−。相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の殺傷事件で八日、元施設職員の植松聖(さとし)被告(29)の初公判が始まった。今も事件を正当化し続ける植松被告は法廷で何を語るのか。「真意」を探そうと被害者の遺族や家族が傍聴席から見つめる中、被告は暴れだし、法廷から一時姿を消した。

 「君は被告人席にいて幸せかと聞いてみたい」

 事件で重傷を負った尾野一矢さん(46)の父親剛志(たかし)さん(76)は八日午前、妻のチキ子さん(78)と横浜地裁に向かう際、植松被告に尋ねたいことを問われると、こう答えた。

 被告の差別的な主張が広がることを懸念し、剛志さんは事件直後から実名で取材に応じ続けてきた。裁判では被害者参加制度を使い、植松被告に直接、質問するつもりだ。一矢さんは被害者で唯一、実名で審理される。

 事件の一年前まで、やまゆり園の家族会の会長を務め、施設で働いていた頃の被告を知っている。「きちんとあいさつできる青年」と好印象だった。だからこそ、あの凄惨(せいさん)な事件の犯人と結び付かなかった。「事件が起きて、私の中に二人の植松被告がいる感じだった。憎みたいが、以前の姿を思い出すと憎みきれない面がある」と複雑な思いを抱え続けてきた。

 「障害者は不幸しかもたらさない」「安楽死させるべきだ」。逮捕後も主張を全く変えようとしない被告の姿に、諦めにも似た感情もあった。「私が話して反省するわけはないだろう」と、接見に行く気にはなれなかった。

 事件で一矢さんは喉などを切られ、重傷を負った。一命を取り留めたが、言葉を発することが少なくなり、食事にもあまり手を付けなかった。ただ、チキ子さんが作った弁当を差し入れると食べてくれた。事件後は園と別の施設で暮らす一矢さんは週一回、弁当を囲んで家族だんらんを続けるうち、笑顔や会話が戻った。以前より家族の絆は強まったと感じている。

 一矢さんの表情に元の明るさが戻った今、被告の真意を知りたいと思っている。暴力に訴えた結果として、世間に植松被告の考えが受け入れられることはなかった。

 「それでも(障害者を差別する)気持ちが変わらないでいるのは幸せなのか?」

 被告が語ろうとしない彼の両親への気持ちもあえて、尋ねるつもりだという。「彼の心にざんげするような、後悔するような気持ちが本当にないのか、探ってみたい」 (土屋晴康)

 

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