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【社会】

検察がゴーン被告逃亡で異例のコメントを出したワケ

逃亡先のベイルートで記者会見するカルロス・ゴーン被告=8日(ゲッティ・共同)

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 保釈中にレバノンに逃亡した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(65)が8日に現地で会見したのを受け、事件を捜査した東京地検が「被告人は処罰を嫌って逃亡した」などとするコメントを発表した。普段は情報発信に後ろ向きな検察が、こうした形で見解を示すのは異例。その狙いは何なのか。(榊原崇仁)

◆HPに掲載「処罰を受けることを嫌い、国外逃亡した」

 地検は九日、「被告人カルロス・ゴーン・ビシャラの記者会見について」と題した文書をホームページ(HP)で公開した。日本語版と英語版があり、「有罪判決が得られる高度の蓋然性が認められるだけの証拠を収集し、公訴を提起した」「犯罪が存在しなければ、起訴に耐えうる証拠を収集できるはずがない」と主張し、「被告人ゴーンは処罰を受けることを嫌い、国外逃亡した」と断じた。

ゴーン被告の記者会見について東京地検が発表したコメント

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 ゴーン被告のレバノンへの逃亡が明らかになったのは先月三十一日。地検は今月五日にも「検察は適正手続きを厳格に履行した」などと記したコメントをHPに掲載している。

◆郷原信郎弁護士「世界の目を意識した動き」

 検察が特定の事件についてこうした対応をするのは極めて珍しく、それが二度となると、まさに異例中の異例。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はその理由を「世界の目を意識したのだろう」と推測する。

 ゴーン被告は会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反の罪で起訴された。これに対し弁護側は、日産に損害を与えていないなどと指摘し、無罪を主張していた。「検察側は有罪に持っていけるか焦りがあったはず。不当逮捕と認識されれば、世界中からバッシングを受ける。『ゴーンの言い分は事実に反している』と印象づけたいのではないか」(郷原氏)

 九日未明の会見で森雅子法相が「潔白だと言うのなら、司法の場で正々堂々と無罪を証明するべきだ」と話したことにも、郷原氏は違和感を抱く。

 森氏は同日夕、自身のツイッターで「無罪の『主張』と言うところを『証明』と言い違えてしまいました」として訂正したものの、罪があるかどうかは検察が立証しなければならない。郷原氏は現段階で有罪視するのはおかしいと非難し、「弁護士でもある森氏がそれを知らないはずがない。誰かに言わされていないか」とみる。

 その真偽は別にして、はっきり言えるのは検察の姿勢が今回は違うという点。検察は通常、報道機関の取材に被告の認否を明らかにせず、不起訴にした際も理由の詳細は言わないケースが目立つ。福岡地検の元次席検事が捜査情報を漏洩した問題をきっかけに二〇〇二年以降、「検察広報官」を各地に配置し、十年ほど前からはフリーの記者が参加できる会見も開くようになったとはいえ、お堅い姿勢は変わっていない。

◆江川紹子氏「捜査は税金 丁寧な説明、普段からすべき」

 九日に東京地検の会見に出席したジャーナリストの江川紹子氏は「普段と違う取材対応をしていた。いつもは三十分で終わるのに、一時間二十分続いた。取り調べに要した時間など、捜査の内容について答えることもあった」と語る。

 その上で江川氏は「捜査に税金を使う以上、責任が生じ、丁寧な説明は普段からやるべきこと。社会の不安を解消するために情報を出すことが求められる場合もある。今回は『情報戦で負けている』と自覚して発信を続けているのかもしれないが、一回限りにしてはならない」と述べた。

(2020年1月10日朝刊「特報面」に掲載)

 

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