東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

気候危機 日本に冷視線 「環境問題 なぜ主導しない?」

COP25に参加した感想を話す(右から)亀山貴都さん、郭拓人さん、太田紘生さん=東京都台東区で

写真

 地球温暖化対策「パリ協定」の始動が迫った昨年12月、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の開催地スペイン・マドリードでは、各国の若者が取り組みを紹介する場があった。参加した非政府組織(NGO)「Climate Youth Japan」(CYJ)の3人は、同世代が募らせる気候変動への危機感に衝撃を受け、同時に日本の存在感の薄さを実感した。 (福岡範行)

 地球環境をどう守るのか。政府同士が議論する会議場前で、世界各地から訪れた大勢の市民たちが、温暖化対策の強化を叫ぶ。干ばつによる食料不足に直面するアフリカ中央部チャドの男子中学生は「どうか助言をください!」と訴えた。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)が登壇したイベントは若者たちであふれかえった。

 「自分は、ここまで必死に訴えていない」。会場と周辺で渦巻く「気候危機」への関心の高さに、CYJのメンバーで日本大三年の太田紘生(ひろき)さん(22)=千葉県船橋市=は圧倒された。

 CYJは大学生と大学院生の計八人が参加。東京五輪・パラリンピックに向けて、食品ロスを減らす取り組みなどを紹介した。インド洋の島国セーシェルの参加者から「私たちの国ではプラスチック容器を禁止したが、日本はどうか」と質問が飛んできた。小さな島国では海のプラスチックごみ汚染が深刻化しており、温暖化にとどまらず各国の若者たちが環境問題の当事者として臨んでいた。

 だが、COP開幕直後、日本政府は温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電を維持する方針を表明。会期中には、海外の環境団体から「化石賞」を二度贈られ、温暖化対策に後ろ向きな国の一つと評された。東京大大学院生の亀山貴都(たかと)さん(23)=東京都文京区=は「地方自治体の温暖化対策宣言や企業の技術開発など、日本の良さが石炭批判で隠れてしまった」と残念がる。

 「日本は技術的に先進国なのに、なぜ環境問題でリーダーシップを取らないのか」。イタリアのジャーナリストに問われ、カナダに留学中の郭拓人(たくと)さん(25)=埼玉県川口市=は「国民が望んでいないからだと思う。地球温暖化なんてうそだ、という人もいる」と答えるしかなかった。

 世界の環境対策強化の流れと日本の大きなズレを痛感した郭さんは「グレタさんを冷めた目で見ている日本人を、世界は冷めた目で見ている」と指摘。「気候変動はあなたの古里や子ども、孫が被害を受ける。いま行動できるのはあなただと伝えていきたい」と力を込めた。

<パリ協定> 京都議定書に代わる地球温暖化対策の国際協定で、2020年1月から本格始動。今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えるのが目標。先進国だけでなく発展途上国にも対策を義務付けた枠組みだが、温室効果ガスの主要排出国の米国は19年11月、国連に協定離脱を通告した。同年12月のCOP25で実施ルールが議論され、一部の合意が先送りされた。

グレタ・トゥンベリさんが登壇したイベントには多くの聴衆が詰めかけた=スペイン・マドリードのCOP25会場で(郭拓人さん提供)

写真

◆「悪影響 すでに起きているのに」

 温暖化問題に関心があり、COP25の議論を日本から注目していた東京都小金井市の大学生梶原拓朗さん(18)は、石炭火力発電の利用を続ける方針を示した日本政府に「悪影響は既に起きているのに」といら立ちを隠さない。

 COP開幕直後の昨年12月3日、梶山弘志経済産業相は「石炭火発、化石燃料の発電所は選択肢として残しておきたい」と発言。小泉進次郎環境相は11日の演説で、COP会場で「世界的な批判は認識している」と語るにとどまった。

 梶原さんは昨夏、日本の金融機関が投資するフィリピンの石炭火力発電所周辺を訪問。現地住民から、生活や漁業に悪影響が出ていることを聞いた。「日本が主張するクリーンな石炭火力は将来の理想論。発電コストが下がってきている再生可能エネルギーの技術開発に力を入れるべきだ」と訴えた。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報