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【社会】

<検証 IR汚職>(下)外れた思惑 「もうかる」一転撤退

雪に覆われた尻別岳。麓ではIRの誘致が計画されていた=北海道留寿都村で

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 新千歳空港からバスで二時間。昨年末に北海道留寿都(るすつ)村を訪ねると、カジノを含む統合型リゾート(IR)の予定地だった尻別岳(しりべつだけ)の麓は、深い雪で覆われていた。地元商店にいた女性(62)は「こんなところにカジノってなあ。信じられんだべさ」とつぶやいた。

 衆院議員の秋元司容疑者(48)=東京15区、自民党を離党=に賄賂を贈ったとされる中国企業「500ドットコム」側が、村でスキーリゾートを営む観光会社「加森観光」とともに、村でのIR参入を表明したのは二〇一八年一月だ。

 中国・深センに本社を置き、スポーツくじを手掛ける500コム。ニューヨーク証券取引所に上場した翌年の一四年十二月期、売上高九十四億円を記録したが、その後業績は悪化し、近年は赤字状態が続いている。

 村は一四年からIRを検討し、売上高は年三百七十億〜五百二十億円に上ると試算。500コムにはカジノ運営の経験がなかったが、村の計画に飛びついた。

 村との窓口役となったのは、同社元顧問の紺野昌彦容疑者(48)だった。「IRはもうかるで。実は沖縄はフェイクや。本命は留寿都やねん」。那覇市で一七年八月、秋元容疑者を講師に招いたIRシンポジウムを手がける一方、親しい知人にはこう漏らしていた。

 北海道の有力者、加森観光会長の加森公人被告(76)と知り合いで、シンポ翌月には一緒に村役場を訪れ、村長らに意気込みをアピール。IR担当の内閣府副大臣だった秋元容疑者を村に呼び、自身も副大臣室に通うなど攻勢をかけた。

 だが、道知事が一八年十一月、IR誘致の優先候補地に村を選ばなかったことで機運は急速にしぼむ。「僕ら、日本でIRやるんは無理でした。もうやめますわ」。紺野容疑者は一九年九月、衆院議員会館の事務所に秋元容疑者を訪ね、撤退を告げた。

 紺野容疑者は翌月、中国の若手経営者ら約二十人を引き連れ、別の議員事務所を訪問している。逮捕前、知人に「新たなビジネスが生まれそうやねん」と興奮気味に語っていたという。

 約十年ぶりに現職国会議員が逮捕されたIR汚職事件。IRを「成長戦略の柱」と位置づける安倍晋三首相だが、今月六日の年頭会見では事件に触れなかった。

 IRを検討していた千葉市の熊谷俊人市長は七日、誘致見送りの方針を表明した際、「事件がきっかけで方針の公表を早めた」と言及。誘致を正式に表明している横浜市の林文子市長も十四日、「立ち止まるべきではないかという意見もあると思う」と事件の影響に触れた。

 野党は二十日召集の通常国会に、カジノ営業を禁じる法案を提出する方針だ。「成長戦略の柱」の先行きは見通せない。 (この連載は池田悌一、山田雄之、山下葉月、井上真典が担当しました)

 

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