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【社会】

早期逮捕へ勾留環境調整 京アニ放火半年 迫れぬ動機

第1スタジオ前で追悼する親子=佐藤春彦撮影

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 三十六人が死亡し三十三人が負傷した京都アニメーション放火殺人事件は十八日、発生から半年を迎えた。青葉真司容疑者(41)=殺人などの容疑で逮捕状=は、重いやけどを負い入院して治療を受けている。京都府警は、勾留施設の環境を整えるため関係機関と調整を続け、早期に逮捕し動機の解明を急ぐ方針だ。

 捜査関係者によると、青葉容疑者は命の危機を脱しているものの、自由に動いたり長時間座ったりすることはできない。リハビリに取り組んでいるが、日常的な動作ができるようになるめどは立たないという。

 一方、逮捕までの期間が長引くと、青葉容疑者の記憶が薄れたり外部から情報を得たりする可能性も生じてくる。府警は恨みを持つ人による襲撃も危惧している。

 そのため早期逮捕に向け、回復を待つのではなく勾留先の環境整備を急ぐ。「病院と同程度の環境」(捜査関係者)をつくるため、介助スタッフや緊急時の医師の手配、バリアフリー化などを関係機関と連携して進めている。その上で、勾留に耐えられるか否かを医師が判断する見通しだ。

 事件は昨年七月十八日午前十時半ごろ発生。青葉容疑者は第一スタジオに玄関から侵入し、ガソリンをまいて火を付けたとされる。スタジオにいた社員三十六人が死亡、三十三人が負傷した。現在も入院中の被害者がいる。

◆月命日 読経ささげる住職 解体作業の傍ら「風化させず」

京都アニメーション第1スタジオに向かい、手を合わせる藤沢めぐみ住職=いずれも18日、京都市伏見区で

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 「これからも一生、手を合わせ続けてゆきたい」。京都アニメーション放火殺人事件で、興禅寺(京都市伏見区)の藤沢めぐみ住職(52)は、犠牲者、残された人々に思いをはせ、現場となった第一スタジオ前で月命日の読経をささげてきた。発生から半年となった十八日も現場近くで手を合わせ「この場所でたくさんの人が亡くなったことを風化させたくない」と話した。

 火災による生々しい焦げ跡が残るスタジオ前。昨年十二月十八日、解体作業の準備を進める重機の音が響く中、藤沢さんは静かに手を合わせた。「もっと生きたかっただろうな」「事件がなければ、今もここで仕事していたのかな」。亡くなった人のことを思うと、お経を読む声が涙で震えた。

 事件当日、何台もの救急車がサイレンを鳴らしながら寺の近くを走る様子に胸騒ぎを覚えた。事件の映像を目にして、現場に向かう気持ちにはなれず、しばらく近くを通ることも避けた。それでも、一カ月たった八月十八日に「何かできることはないか」と足を運んだ。目にしたのは、献花台に供えられたたくさんのイラストや涙するファン。「絶対に風化させてはいけない」と心に誓い、月命日に読経することを決めた。

 百か日の法要を終えた十月の夜、寺の電話が鳴った。か細い女性の声。「あの事件で息子を失いました」。思いも寄らない言葉が返ってきた。

 「いろんな思い出があふれてつらいんです」。女性はすすり泣きながら訴えた。事件前に二人で祇園祭に行ったこと、夢だったアニメに関わる仕事を頑張る姿…。「今も遺骨を手放すことができません」と聞き、一緒に泣いた。最後に、女性はぽつりと切り出した。「いつかまた、京都に行けるかな」。小さな声の奥にある心に向き合えた気がした。

 事件から半年がたち、スタジオはフェンスに囲まれ、シートで覆われてしまった。春にはなくなってしまう。それでも、どこかで祈り続けようと考えている。「ここで生きていた人たちを思い出すきっかけになってほしい」

 

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