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【社会】

裁判費、ネットで調達 高浜廃炉、不正入試、同性婚訴訟…

クラウドファンディングで訴訟費用約370万円が集まり、喜ぶ原告団のメンバーら=名古屋市中区で

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 原発関連の訴訟など公益性の高い裁判で、インターネットで資金を集めるクラウドファンディング(CF)を使って訴訟費用を集める手法が注目されている。「社会正義」を求める裁判では、弁護士は損得勘定抜きで、報酬はおろか経費も自己負担して携わるのが美徳とされてきたが、弁護士収入の減少などで担い手は不足。CFが打開策となるか、関係者の期待は高まる。 (小沢慧一)

 関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)などの廃炉を求める訴訟を名古屋地裁に起こしている名古屋市の市民団体「老朽原発四十年廃炉訴訟市民の会」。昨年十月に訴訟費用への寄付を募ると、二カ月余りで目標額の一・五倍に相当する約三百七十万円が集まった。

 弁護士が無報酬なのは変わらないが、これまで弁護士や支援者の持ち出しだった交通費や集会の会場費などを賄えるようになるという。

 原発訴訟以外でも、耳目を集める裁判でCFを活用する例が増えている。

 東京医科大の入試で女子受験生らが不利になる得点操作がされた問題の民事訴訟では、約七百四十万円が集まった。同性婚を認めないのは憲法違反だとして国を訴えた訴訟には、約千五十万円が寄せられた。

 昨年二月には、訴訟向けCFの専門サイト「コール4」も開設された。

 運営する谷口太規弁護士は、「訴訟は社会問題を解決する一つの手段だが、一般の人には伝わりにくかった。CFを通し、多くの人に原告の問題意識を共有してもらえたら」と期待する。

 CFに詳しい桃山学院大の松尾順介教授(経営学)は「司法への関心を深める手段として期待できるが、費用がどう使われたか、余ったらどうするかなど、透明性の確保が課題」と指摘。海外でのCF先行例を参考に「その経験を取り入れながら、適切な運用のひな型を形成していくべきだ」と注文している。

◆「手弁当」苦しい弁護士 収入減傾向、担い手不足

 弁護士側は、いわゆる「手弁当」では法廷活動を続けられなくなっている。国の司法制度改革で弁護士の数が十年前から約一・五倍に増え、一人当たりの収入は減少傾向に。

 奨学金などで一千万円近い借金がある若手もいるほか、弁護士個人に志があっても、もうけの少ない訴訟に関わることに所属事務所が了承しない場合も多い。

 名古屋訴訟の弁護団長の北村栄弁護士は「かつては六割を経営のための仕事に充てれば、残りの四割で社会正義の活動ができた。今は弁護団の仲間を集めるのも容易ではない」と嘆く。

 今月十七日、四国電力伊方原発3号機を巡り、運転を認めないとする広島高裁の仮処分決定を住民側が勝ち取ったが、十人以上の弁護士は全員無報酬で交通費も自腹だ。

 訴訟を支援する団体事務局の内山洋二さん(62)は「金銭面は常に厳しく、弁護士の負担はかなりの額になる」と内幕を明かす。

<クラウドファンディング> 英語で群衆を意味する「クラウド」と、資金調達の「ファンディング」を組み合わせた造語。取り組みたい内容をインターネットで発表し、賛同した人から資金を集める仕組み。企画の成功時に金銭を払う投資型、見返りの商品などを資金提供者が買える購入型、見返りは出さない寄付型などのタイプがある。

 

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