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【社会】

英国王子「離脱」、日本の皇室でもあり得るのか?

ヘンリー王子(右)とメーガン妃=7日、ロンドン(AP・共同)

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 英王室のヘンリー王子とメーガン妃夫妻が、王室から「離脱」するという。王室の称号が使用できず、公式の女王の代理を務めたり、公金を受け取ったりすることもなくなる。かつてエドワード8世による「王冠をかけた恋」という離脱事例もあった英王室。ゆかりの深い日本の皇室でこうしたことはあり得るか。(石井紀代美)

◆SNSで「公務からの引退」を宣言

 「王室の血を受け継ぐ人が離脱することに、英国人は驚きを持って受け止めているのではないか」。英国政治が専門の高安健将・成蹊大教授はこう語った。

 ヘンリー王子は、父親のチャールズ皇太子、兄のウィリアム王子、兄の三人の子どもに次いで第六位の王位継承順位を持っていた。そんなヘンリー王子は年明けの今月八日、突然、会員制交流サイト(SNS)で「主要公務からの引退」を表明した。

 本人は称号を維持したまま、主要公務からは退く考えを持っていたが、英王室は十八日、高位の王族を示す称号を外すと発表した。

 高安氏は「ヘンリー王子に対するメディアのバッシングが非常に強かった。米国人で、離婚歴があるメーガン妃と結婚後は特にだ。夫妻は世間から注目されることを避けたかったのではないか」と語る。

◆英国王室には「王冠をかけた恋」の前例あり

 高安氏によれば、英王室の存続と世間からの注目は、分かち難い関係がある。歴史上、王制を敷いてきた英国は、二十世紀の民主化の時代に入り、存在意義を問われることになった。

 「英王室は自らの立ち位置をずっと探ってきた。たどり着いたのが『社会貢献』であり、『親しみやすさ』だった。その役割があるから、存続も許されるというもの。その文脈からいくと、称号は認められなかったのだろう」と説明する。

 実は、英王室における「離脱」はこれが初めてではない。一九三六年、国王のエドワード八世が四十二歳の若さで退位。離婚歴のある女性と結婚したかったのが理由で「王冠をかけた恋」と呼ばれた。

◆「ひげの殿下」の離脱、後継者不足で実現せず

 ところで、日本の皇室でも同じように「離脱」を考えた皇族は過去にいた。「ひげの殿下」で知られ、二〇一二年に逝去した三笠宮家の寛仁親王だ。福祉活動に打ち込むあまり、一九八二年に「皇族としての務めと自分がしようとしている仕事とが両立しない」として、皇籍離脱の意向を宮内庁に伝えた。

 皇室文化研究家の所功氏は「皇室会議で議論されたが、後継者不足のため、宮内庁が何度も説得し、通常の公務を減らす形で思いとどまってもらった」と経緯を振り返る。

◆日本でも理屈上は可能だが…

 皇室典範では、本人の意思に基づき、首相や最高裁長官らで構成される皇室会議を経て、「皇族の身分を離れる」と定めるため、理屈上は可能だ。所氏は「英王室のような離脱は法的には不可能ではないが、現実的には状況が難しいのでは」と話す。

 放送大の原武史教授(日本政治思想史)も、離脱について「皇位継承者数が先細りの現状では、右派から『天皇制そのものをなくすことにつながる』という猛反対が出てくるのは間違いない」と断じる。

◆皇族・王族も人間「時代にあった在り方を」

 ただ、「上皇が『天皇の退位』を強くほのめかした際、国民の多くが支持した前例がある。もし、ヘンリー王子のような動きが出れば、『その気持ちをくみ取るべきではないか』という世論が形成される可能性がある。その場合には必然的に、ほとんど進まなかった女性・女系天皇の議論が一気に加速するだろう」と予測する。

 前出の高安氏は言う。「王族や皇族も人間。その在り方は、その時代時代で問い返されていくべきものではないでしょうか」

 

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