東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

虐待、AIで救え 発生確率予測 児相を手助け

虐待の状況を入力するタブレット端末

写真

 千葉県野田市の小学四年栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が虐待を受けて死亡し、あす二十四日で一年。小さな命が奪われる悲劇を防ぐため、人工知能(AI)を活用し虐待の恐れがある子どもを早期に救おうとする試みが始まっている。AIが過去の虐待事例のデータを分析してリスクを予測、保護の必要があるか判断を支援する。三重、広島両県が導入を検討、厚生労働省も有識者による研究を進める。人手不足に悩む児童相談所の運営改善に役立てたい考えだ。

 「頭部顔面腹部に傷あざがある リスクは67%」「児童自身が保護を訴える リスクは99%」

 三重県と産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は、被害者の年齢や性別、傷の場所、重傷度、加害者の属性、虐待期間など十七項目をタブレット端末に入力すると、子どもを保護する必要性や虐待の再発可能性を「総合リスク」という数値で表すシステムを開発した。

 三重県が過去六年間に対応した児童虐待事例約六千件のデータをAIで分析。頭に傷があると虐待が再発する恐れが高く、一時保護した方が再び虐待を受ける可能性は低くなるという。

 三重県では二〇一二年に虐待で子どもが亡くなる事件があり、悲劇を繰り返さないためシステム開発を進めた。昨年七月から県内二カ所の児童相談所でタブレット計二十台を試験導入した。虐待の連絡があると職員がタブレットを持って家庭を訪問。聞き取った内容やけがをした部分を絵や写真で入力する。表示された総合リスクも参考にして対応を判断する。産総研の高岡昂太さんは「情報をすぐに共有でき、判断をサポートしてくれる」と指摘した。

 広島県は行政が持つデータをAIで分析し、児童虐待や不登校が起こる可能性がある子育て家庭を予測する取り組みを同県府中町で検討している。虐待などの発生確率を予測するシステムを構築し、リスクが高そうな家庭を手厚く支援、問題発生を未然に防ぐのが狙いだ。これまで問題が起きてから対応していたが、先手を打って家庭訪問するなどの対策を考える。

 行政や学校にある基本的な家族情報や収入状況、生活保護、児童扶養手当などのデータを使う予定だ。広島県の担当者は「個人情報なので慎重に扱わなければならない。リスクがある家庭や子どもを予防的に見つけて支援していきたい」と話している。

 厚労省によると、一八年度の全国の児童虐待相談対応件数は十五万九千八百五十件と増える一方、対応に当たる児童福祉司の数は三千二百五十二人にとどまる。政府は福祉司の増員を決定しているが不足しているのが現状だ。厚労省は今後AIが虐待のリスク評価に活用できるかどうか有識者による検討を進める方針だ。

写真

◆職員の丁寧な説明必要

 児童虐待問題に詳しい愛育研究所の山本恒雄客員研究員の話 職員個人の経験知だけでなく大量のデータをAIで分析すれば、傾向や予兆を見いだすことができる。ただし職員が虐待を受けている子どもやその家庭ときちんとコミュニケーションを取り、信頼関係を構築することが大切だ。丁寧に説明して解決につなげることは人間がする仕事だ。AIの力を借りながらトレーニングを積み重ねていかなければならない。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報