東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

相模原殺傷公判 被告、正当化延々と 弁護人質問遮り持論

 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら四十五人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元施設職員、植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判が二十四日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。被告人質問で「自分は(刑事)責任能力がある。責任能力がなければ即死刑にすべきだ」と述べ、弁護側の無罪主張を否定。「意思疎通の取れない人間は安楽死させるべきだ」と従来の差別主張を繰り返した。 (土屋晴康)

 障害者差別を抱く経緯について、やまゆり園で働くうち「こんな世界があるのかと驚いた」と振り返り、「重度障害者は必要ない」と思うようになったと述べたが、それ以上の詳しい説明はなかった。

 障害があっても大切にする家族がいると弁護人に問われると「お気持ちは分かりますが、国からお金を支給されて生活しているので、愛して守ってはいけないと思う」と主張した。

 具体的に犯行を計画したのは、「障害者に危害を加える」と表明して措置入院となった二〇一六年二〜三月。当初は「家族の同意を得て安楽死させるべきだ」と考えたが、「障害者を愛する家族がいる」と知ったとして、同意は必要ないと考えたという。犯行については「正しいことなので、やるべきだと思った」と独自の考えを展開。入所者を襲う際の心境は「社会の役に立ちたいと考えていた」と明かした。

 また、「人の役に立つことをすれば金が入る」と考え、障害者を殺害し、国の借金を減らそうとしたと主張。弁護人に「金は入ったのか」と聞かれ、「入っていない。どうやって入るか考えていないが、お金を持つ権利があると思った」などと語った。

 大麻は二十三歳ごろから、週二〜四回吸っていたと認めた。障害者を殺害する計画を五十人くらいに話し、「『重度障害者を殺す』と言った時、一番笑いが取れた」ため、「半分以上の人に同意や理解を示してもらった」などと語った。「二審、三審と続けるのは間違っている」と述べ、一審判決を受け入れる考えを示した。

 公判の争点は、犯行時の刑事責任能力の有無や程度。弁護側は大麻の影響などにより心神喪失か心神耗弱だったとして無罪を主張している。検察側は完全な責任能力があったと主張している。被告人質問は二十七日、二月五、六日にも行われる予定。

◆被害者家族「あきれた」

 「責任能力を争うのは間違っていると思います」「大麻の話をもう少し」

 植松聖被告は初めての被告人質問で、大麻などの影響により刑事責任能力がなかったという弁護人の主張を否定し、その後もかみ合わないやりとりが際立った。いつ、なぜ障害者への差別思想を抱いたか詳しく聞きたかった傍聴人らの期待は裏切られた。

 法廷で被告が口を開くのは二回目。小さな声で話した初公判と違い、証言台前の席に座り、弁護人の方に前のめりになりながら、はっきりした口調で語った。時折、声に熱がこもり、ハンカチで額や首の汗をぬぐう場面もあった。

 ただ、大麻の合法化の必要性などを熱く語る被告に、弁護人が次の話題に移ろうとすると、被告は「大麻の話をもう少し」と求め、持論を展開し続けた。

 夕方には植松被告が「自分に死刑判決が出ても、自分の両親は文句は言わない。仕方ないことが分かっている」と主張すると、弁護人が慌てた様子で「体調はどうですか」「少し休憩した方がいいんじゃないですか」と気遣う様子を見せた。被告は「大丈夫です」と断ったが、弁護側が押し切って休廷になり、そのままこの日の審理は終わった。

 事件で重傷を負った尾野一矢さん(46)の父剛志(たかし)さん(76)は傍聴後、「怒りがわくっていうよりあきれちゃった。なぜ、意思疎通の取れない人を殺してよいと思い立ったのか、今後の裁判で明らかにしてほしい」と話した。

 傍聴したジャーナリストの江川紹子さんは「被告がどうしてゆがんだ価値観を持つようになったか、分からなかった。オウム真理教事件の裁判では、弁護人が丁寧に被告の成育状況を明らかにして見えたことがあった。今回の事件でも、弁護人が植松被告との関係をつくり、なぜこうなったかを示してほしかった」と話した。 (丸山耀平、杉戸祐子、北爪三記、小野沢健太)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報