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【社会】

原発政策議論 リスクないがしろ 電力供給、産業、立地に力点 明大教授分析

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 東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の前に原子力政策を議論した国の審議会を巡り、議事録の発言を分析すると、自然災害や事故、原発から出る放射性廃棄物などの議論が乏しく、テーマが偏っていたとの研究結果を、勝田忠広明治大教授(原子力政策)がまとめた。

 全体の構図として官僚、大学の研究者、経団連などの団体が主導し、主に「エネルギー政策」「核燃料サイクル」「産業」などについて議論したことが明確だった。

 勝田教授は「原発の推進には、想定外の自然災害に備えることが必要だと福島事故で分かった。しかし当時は、その災害リスクに関する発言はなく、先見性のある議論をしていないことが明らかになった」と指摘する。

 この審議会は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力部会。電力自由化の中での原子力政策について二〇〇五年七月〜〇六年八月に十三回開催され、原発の新増設などを盛り込んだ報告書「原子力立国計画」をまとめた。委員は三十五人で多くの官僚も出席した。

 勝田教授は議事録の単語を抽出し、一つの文に「原子力」と「資源」「エネルギー」などが含まれる場合は「エネルギー政策」、「原子力」と「交付金」「自治体」などがある場合は「立地地域問題」など、単語の組み合わせで発言を分類。誰がどのテーマを話したかを分析した。

 すると、ほぼ全員が「エネルギー政策」を話していたが、事業者は「電力供給計画」、メーカーは「産業」、自治体は「立地地域問題」に力点を置いていた。国が長年推進し、電力業界が建設した再処理工場(青森県)が試運転中だった「核燃料サイクル」は、官僚による発言が目立った。

 勝田教授によると、安全を巡る発言は多いが、安全性の懸念ではなく「安全だから進める」などの使い方だという。「地震」「津波」に関する発言はほとんどなかった。

 勝田教授は「福島事故後の審議会の議論を分析し、変化があるかどうかを調べたい」と話す。

◆官僚、財界人 「主張」ばかり

 原子力政策を巡る審議会の議事録を分析した研究で、参加者の発言内容をコンピューターソフトに学習させた後、発言者を隠して内容から誰が話したかを判断させると、75%の確率で言い当てた。所属先や業界を代表するような決まり切った発言や主張が多く、議論が深まらなかったことをうかがわせる。

 研究を実施した勝田忠広明治大教授は「委員は自分の背負った立場を話しているだけだ」と話す。会合を充実させるには、多様でバランスの取れた立場の人を入れ、議論を積み上げていくことが必要と指摘する。

 この研究は、審議会のさまざまな側面を浮き彫りにした。核燃料サイクルに関する発言は官僚が多く、勝田教授は「電力自由化が始まり、事業者の不安が大きかった時期で、事業者がいやがる核燃料サイクルを国が後ろからけしかけていた様子がよく分かる」と話す。

 この審議会がまとめた報告書「原子力立国計画」は、経済産業省がその後の政策の基盤にした。だが勝田教授は「盛り込まれた政策は、高速増殖炉の実用化など全てが失敗か、実現していない。なぜ失敗したかを分析し、次の政策に反映させないといけない」と話す。審議会の課題として「若い世代の意見を取り入れる方法も考えるべきだ」と指摘する。

 

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