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【社会】

ふるさと納税 国勝訴 新制度後も「グレーゾーン」

判決後、報道対応する大阪府泉佐野市の千代松大耕市長=30日午前、大阪市で

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 昨年六月に始まったふるさと納税の新制度では、自治体間の過度な競争を防ぐため、返礼品を寄付額の三割以下の地場産品などとする法規制が設けられた。だが国は運営状況を常にチェックしているわけではなく、現在も「グレーゾーン」の手法で寄付を集める自治体は後を絶たない。 

 「コスパ最強」「高還元率保証」。インターネット上では対価の高い返礼品を紹介するウェブサイトが複数存在し、お得な返礼品が人気を集める状況は変わっていない。

 総務省によると、返礼品の選定は自治体の裁量に委ねられ、全てが基準を満たすか確認できないのが現状だ。ある自治体の担当者は「返礼品の調達費は自己申告。高い還元率を狙って市場価格よりずっと低い値段で報告している場合も多い」と声を潜める。

 制度の穴を突いて地場産品ではない品を返礼品とする手法も横行している。昨年度全国七位の寄付額の約七十六億円を獲得した大阪府熊取町は、町外で生産された防水スピーカーや電動歯ブラシなどの家電製品を、地場産品の「泉州タオル」とセットで返礼品としている。

 新制度は地域資源の乏しい自治体に配慮し、関連のある複数の返礼品をセットで贈る場合、主要な部分が地場産品であれば認めている。

 同町の担当者はこの規定を利用したと主張し「あくまでもタオルがメインで、家電は関連品。他の自治体との競争力を付けるために、できることを考えた」と説明する。

 総務省の担当者は「新制度は始まったばかりで至らない点もある。自治体には良識を持って制度に参加してほしい」と訴えた。

◆泉佐野市長「残念の一言」

 ふるさと納税の新制度を巡る三十日の大阪高裁判決は、大阪府泉佐野市を除外した総務省決定の取り消しを求める市の請求を退けた。判決後、記者会見した千代松大耕市長は「残念の一言に尽きる」と落胆を隠せない様子で話した。

 千代松市長は三十日午前、険しい表情で高裁の構内へ。法廷ではうつむき加減で座り、緊張した面持ちで口を真一文字に結んで判決を待った。裁判長が「原告の請求を棄却する」と言い渡した際、ほとんど身動きせず、静かに聞き入っていた。

 会見で「残念」という言葉を繰り返して悔しさをにじませた千代松市長。「市民など多くの方々に応援していただいた」とも述べ、訴訟に込めた思いを明かした。市の幹部も「驚きの判決だ」とつぶやき、敗訴に衝撃を受けていた。

◆地方分権にも一定のルールを

<一橋大大学院の佐藤主光教授(財政学)の話> 大阪府泉佐野市は返礼品競争を過熱させ、ふるさと納税制度の趣旨をゆがめたという経緯を重視した妥当な判決だ。だが、泉佐野市に問題があるのではなく、制度自体が過熱化を生み出し、総務省の制度見直しの対応も遅きに失した。地方分権といえども、地域間の競争には一定のルールが必要だ。実際に納税した人も含め、返礼品の在り方など、ふるさと納税制度をどう考えるのかが私たちに残された宿題といえる。

 

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