東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

クマ 寝不足注意!! 冬眠中のはずが…暖冬で目撃多数

通常は冬眠で『省エネ対策』するツキノワグマ=滋賀県内で

写真

 暖かい日が多い今冬、自然界で異変が生じている。冬眠しているはずのクマが各地で目撃されているのだ。小学校や住宅地にも出没して騒動になったケースもある。それにしても、なぜ「不眠グマ」がいるのだろうか。人への被害ばかりでなく、クマの健康も心配になる。(榊原崇仁)

◆山形県では今年すでに4回目撃

 山形県南部の南陽市では一月九日、小学校から下校途中の児童がクマを目撃し、老人ホームへ逃げ込んだ。ツキノワグマとみられる。市総合防災課の高野祐次課長は「今年は雪が全然ない。一月なら数十センチは積もっているのに。地元の長老も『こんなことはなかった』と言うぐらい。クマの話も暖冬と何か関係があるのかも」と話す。

 県の統計が残る二〇〇七年以降、一月の目撃例は一三年に一回だけ。それが今年は二十六日までに四回にのぼった。県みどり自然課の加藤雄祐課長補佐は「クマの動きが例年と違っている」と警戒する。

◆全国で人間の生活圏にも

 一月の目撃情報は北海道や青森、宮城、福島、富山、石川の各県などであった。昨年末には三重県でも捕獲されている。

 人間の生活圏に入ってくるケースもある。新潟県見附市では、県営住宅の階段にクマが入り、捕獲されるまで外出できなくなった住民も。山形県米沢市では民家の軒下で衰弱した子グマが見つかった。

消波ブロックに挟まり、捕獲されたツキノワグマ=2019年12月、三重県紀北町の長島港で

写真

◆冬眠は「エネルギーの節約対策」

 当然ながら「今は冬眠の時期じゃないの?」という疑問が湧く。

 一般的にクマは十一〜十二月に冬眠に入り、春に目覚める。クマの保護に取り組む「知床財団」(北海道)の石名坂豪主任研究員は「性別、大人か子どもかで若干の差が出てくるが、冬眠はエネルギーの節約対策という意味合いは変わらない」と説明する。エサを探すために体を動かせばエネルギーを消費する。ただ、冬場はエサが乏しい。だから秋に「食いだめ」をし、冬はじっと「省エネ」でやり過ごすということだ。

◆エサを探し続けている?

 酪農学園大の佐藤喜和教授(野生動物生態学)は「雪が少ないと、地面に残るドングリなどを見つけやすい。だから秋からエサを探し続けているということも考えられる」と語る。

 クマの生態に詳しい山形大の玉手英利教授(生物学)は「暖かい気候が続くと、クマが『じっとしている必要がない』と判断して、動きだすこともあるのではないか」とみる。

◆クマとの距離、温暖化を考えるきっかけに

 とはいえ、寝不足はやはりよろしくない。玉手氏は「暖かいといっても冬は冬。エサは乏しい。動けばエネルギーを消費するばかり。衰弱してしまうことも考えられる。エサがないと冬でも人里に下りてくることもあるだろう。繰り返し人家に近づけば駆除の対象になってしまう」と語る。

 その上で玉手氏は「人間の側は二つのことを考える必要がある」と強調する。一つは人的被害の対策。玉手氏は「冬以外でもクマの下山に備え、距離の取り方を考えておくことだ」と注意を促す。

 もう一つは温暖化だ。玉手氏は「クマが衰弱すれば個体数が減りかねない。温暖化の影響はそれだけでは済まない可能性も高い。生態系や自然環境に温暖化の余波がどう及び、どう手を打つべきか、今回の件をきっかけに考えるべきだ」と訴える。

(2020年2月1日朝刊「特報面」に掲載)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報