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【社会】

犬も献血、お願いします! ドナーが不足、小型犬人気も一因

採血されるパックス=いずれも杉並区のエルムス動物医療センターで

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 献血をお願いします−。人間ではなく、ワンちゃんネコちゃんへの呼び掛けだ。動物には日本赤十字が行う人間用の血液バンクのような仕組みがないため、各動物病院でドナー登録してくれる動物を募っている。日本ではまだあまり知られていない動物の献血事情を探った。 (石原真樹、写真・佐藤哲也)

 「ワンワン!」。一月の土曜日、民間の動物病院・エルムス動物医療センター(杉並区)の待合室に、オスのゴールデンレトリバー、パックス(7つ)がさっそうと現れた。

 パックスが献血するのは初めてで、ドナーになれるか調べる血液検査などのために来院した。十三種類以上あるとされるイヌの血液型や、感染症にかかっていないかなどを調べる必要があるからだ。

 検査に必要な血液は3ccほど。実際の献血では200ccほどで、鎮静剤を打って首元から採血することが多いが、この日は鎮静剤は打たずに後ろ脚から採る。注射針は人間用よりも細めだという。

採血を終え、血液を移し替える獣医師の村田育枝さん

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 病院大好き、人間大好きというパックス。しっぽをぶんぶん振り回して興奮していたが、スタッフが二人がかりで「いい子だね〜」などと声をかけながら首回りと胴体を抱え込むと、おとなしくなった。獣医師の村田育枝さん(29)が注射針を刺しても暴れたりせず、一度針が抜けてはしまったが、採血はあっという間に終わった。

「頑張ったね」と採血を終えたパックスを抱きしめる飼い主の戸谷早苗さん(右)。左はスタッフの塩谷ケリーさん

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 別室で待っていた飼い主の戸谷早苗さん(50)に「頑張ったね」とハグされ、満足そうなパックス。検査結果は貧血もなく良好で、村田さんは「血液は濃いめ。献血はとてもありがたい」と太鼓判を押した。一部の外注検査を除き、検査結果を待つ時間を含めて一時間ほど。献血は無報酬だが、人間がジュースなどをもらえるようにノミ、ダニの薬がもらえる。ドナーになると定期的に来院して献血するほか緊急呼び出しもある。戸谷さんは「健康だと分かって良かった。少しでも役に立てたらうれしい」と話した。

◆供血犬・猫のいらない社会に

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 「ドナー登録を増やして、供血犬・猫のいらない社会にしたい」。同センターのスタッフで、東日本大震災で被災した動物の支援などにも取り組む塩谷ケリーさん(55)は力を込める。

 供血犬・猫とは、血液を提供するために病院内やスタッフの自宅で飼われる動物のこと。大切に育てられる動物がいる一方で、中には、窓のない部屋に放置されて、めったに散歩してもらえない動物もいるという。塩谷さんは、献血できる年齢を過ぎて「引退」した供血犬・猫を引き取って新たな飼い主を探す活動もしており、フェイスブックページ「供血犬ってご存じ?」で情報を発信している。

 動物の輸血療法技術の向上や普及を目指す日本獣医輸血研究会によると、海外では米国などで企業が施設でイヌやネコを飼育し、血液を提供する仕組みがある。日本で動物の血液製剤を提供するには法律上、厳重な感染症対策が必要で、多大な費用もかかるため、現実的ではないという。

 このため各病院が院内で動物を飼ったりドナー登録を呼び掛けて輸血に備えているが、近年の小型犬人気で献血できる「若い大型犬」が減っていることもあり、なかなか集まらないのが実態。病院が血液を用意できず、飼い主が「助けてください」と会員制交流サイト(SNS)などで自らドナーを探すケースも相次いでいる。

 同会は、輸血療法はまだ発展途上だとして「安全にペットの献血・輸血ができる病院なのか、事前に調べてほしい」としている。

 

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