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【社会】

新型肺炎 感染経路、情報乏しく 厚労相「ない」繰り返す

 新型コロナウイルスに感染した神奈川県内に住む八十代女性が十三日に死亡し、国内初の死者となった。加藤勝信厚生労働相は会見で女性の感染経路や基礎疾患の有無に関する具体的な情報は「ない」と繰り返した。女性の義理の息子で東京都内のタクシー運転手が感染していたことも判明。都内の同業者には動揺が広がった。 

◆新型肺炎 国内初死者

 「ご冥福を祈り、お悔やみを申し上げる」。十三日夜、緊急記者会見を開いた加藤勝信厚生労働相。神奈川県の八十代女性が死亡したことを明らかにし、沈痛な表情で頭を下げた。国内で流行していると判断するかどうかは「現時点で疫学的な情報が集まっていない」と述べるにとどめた。

 十三日午後八時四十分すぎ、厚労省九階の会見室。四十人以上の報道陣を前に、カメラのフラッシュを浴びながら姿を見せた。女性の感染経路や基礎疾患の有無を問われると、硬い表情で「具体的な情報を持ち合わせていない」「情報は入ってきていない」。

 女性は死亡が確認される一日前の十二日にウイルス検査を受けていた。「検査が遅かったのでは」との質問にも「答えを持ち合わせていない」と応じた。

 同じく感染した東京都の七十代のタクシー運転手との関係は「今の段階でこうだと言える状況ではない」と話した。

 検査態勢の強化については「一つ一つの事例をしっかり検証しながら、必要な対策を積極的に取っていく」と強調。「高齢者、基礎疾患のある人は重症化しやすい。症状があれば相談を」「せきエチケットや手洗いにしっかり取り組み、できるだけ人混みを避けてほしい」と呼び掛けた。

◆タクシー感染どう防ぐ 運転手「マスクどこまで効果が」

 日比谷公園(千代田区)近くで待機していた個人タクシー運転手の五十嵐孝三さん(72)は車内のモニターで「運転手感染」のニュースに「車内ではマスクをするくらいしか対策ができないし、どこまで効果があるのか分からない。自分も高齢なので感染しないか不安だ」と困惑する。

 都内のタクシー会社の担当者は「感染の広まりを予想して対策をしていたが心配だ」と、困惑の色を隠せない様子だった。

 羽田空港の送迎が多く、外国人観光客も多く乗せるタクシー会社「品川タクシー」はすべての運転手にマスクを配布し手洗いの励行、車内のこまめな換気を呼び掛ける。

 体調が悪そうな客を乗せた場合は、噴霧器で車内を消毒する。ただ、菰田哲明取締役は「今後も感染が続けば、備蓄のマスクや消毒効果があるスプレーも手に入りづらくなる」と頭を抱えた。 (安藤淳、原田遼)

◆感染の運転手、先月29日発熱 都が説明

 一月二十九日に発熱を訴え入院した都内在住の個人タクシー運転手の七十代男性が、新型コロナウイルスに感染していた。東京都が十三日、明らかにした。

 都によると、男性は発症前の十四日間以内に中国の滞在歴はなく、中国人を含め外国人の乗客を乗せたこともないと話しているという。普段は二十三区内を中心に業務をしている。発症後は仕事をせず、自宅や医療機関にいたとしている。

 男性は一月二十九日の発熱で、都内の医療機関を受診。その後自宅で療養したが、症状が改善しないため二月三日に再度、同じ医療機関を受診したところ、肺炎像が見られ、別の医療機関を紹介されて受診し、自宅で療養していた。

 六日に二カ所目に受診した医療機関を再度訪れて入院。十二日に検査を行い、十三日に感染が判明した。最初の医療機関には自転車で移動し、二カ所目の医療機関へは自家用車で向かったという。

 発熱や肺炎症状があるが、重症ではないとしている。男性は妻と二人暮らし。妻に今のところ症状は出ていない。都は感染経路や濃厚接触者を調べている。 (原昌志)

◆クルーズ船乗客ら安堵 希望する80歳以上下船へ

 八十代の母が、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客という東京都内の四十代女性は「良かった。乗客の家族はみなホッとするのではないか」と、ウイルス検査が陰性となった八十歳以上の希望者を下船させる方針を歓迎した。

 友人と旅行中だった母親は過去に胃を摘出。痛み止めの薬が切れて丸一日、薬を飲めない日があった。十一日に船内を散歩中に倒れ、神奈川県内の病院に救急搬送。感染症病棟で療養中で、今後ウイルス検査を受ける。女性は「陸地なら薬の心配が無くなるのでは」と話した。

 一方、乗客の千田忠さん(76)は「対応が後手後手。閉鎖的な客室内で長期間過ごし、高齢者にウイルス感染以外でも心身の不調が増えている」と訴える。

 十三日にも新たな感染者が確認されたことに、千田さんは「(客室に)隔離された五日以降も感染が広がっているのではないか」と不信感を募らせる。ただ、派遣された医療チームには「献身的な活動に大変感謝している」と話した。 (土門哲雄、井上靖史)

◆第1便帰国 全員が滞在先退出

 新型コロナウイルスの感染拡大により、中国・武漢市からチャーター機第一便で帰国し、千葉県勝浦市の「勝浦ホテル三日月」や埼玉県和光市の税務大学校に滞在していた約百六十人が十三日、帰宅するため退出した。十二日に帰宅した人を含め、経過観察後の再検査で陰性だった第一便帰国者計百九十七人は、全員が帰路に就いた。

 政府によると、第二便で帰国し、税務大学校などで経過観察中の百九十九人も再検査の結果、陰性と確認された。退去が可能になり、十三日夜、迎えの車両で施設を出る人の姿もみられた。政府手配のバスなどで施設を出発するのは十四日午前の方向で調整している。

◆神奈川県「接触人数調べる」

 神奈川県内に住む八十代女性が死亡したことを受け、県は十三日夜、緊急の会見を開いた。県によると、十二日に県内の保健所から女性の感染が疑われるため、PCR検査をすると連絡が入った。女性が死亡したのは十三日午後一時半で、陽性反応が出たとの連絡はその四時間後だった。

 医療機関は当初、肺炎球菌などの感染を疑い、抗生剤を投与するなどの治療をしていた。改善しないため医師がコロナウイルスの感染を疑い、検査を決めたという。感染経路について、前田光哉・保健医療部長は「現在、女性がどれくらいの人と接触したのか、国と共に調べる」と述べるにとどまった。 (志村彰太、丸山耀平)

◆神奈川県民の声「政府の対応後手では」

 新型コロナウイルスの感染者で、国内で初めて神奈川県の女性が死亡した。横浜市内では「政府の対応は後手後手では」と、感染の広がりを不安視する声が聞こえた。

 横浜港には、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊している。中国からの訪問客も多いことから、横浜市中区に住む会社員の女性(57)は「時間の問題だと思っていた」と表情を曇らせた。感染の経路が分からない状況に「手洗いやマスクで対応しているが、これからは病院に行くのも不安だ」と話した。

 仕事帰りだという戸塚区の自営業の男性(62)は、友人からの電話でニュースを知った。友人は人混みを避けているといい「私もあまり外に出ないようにした方が良いのかな」と語った。

 同県綾瀬市の飲食店従業員の男性(48)は「風評で人が来なくなるなど店への影響が心配だ」とこぼした。

 

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