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【社会】

夢なき特定技能ビザ 「家族伴って来日ダメ」「5年働いて終わり」

留学生や技能実習生ら多くのベトナム人が悩みの相談に訪れる寺院「日新窟(にっしんくつ)」。旧正月を前にした1月24日夜も大勢の若者が集まり、お経を唱えていた=東京都港区で

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 アルバイトの留学生らを含む外国人労働者を対象にした地元紙12紙の協働調査では、昨年4月に新設された在留資格「特定技能」について、取得を「希望しない」という声が「希望する」をやや上回った。賃金不払いや過重労働などさまざまな問題が生じている外国人技能実習生は待遇の向上を期待する一方、留学生などには魅力に欠けることが浮かび上がった。 (外国人労働者問題取材班)

 調査では、「特定技能のビザがほしいですか」との質問に三百五人が回答し、「はい」が百三十二人(43%)、「いいえ」が百四十人(46%)、「分からない」や無回答などが三十三人(11%)だった。特定技能への切り替えを「望んでいる」と答えたのは、技能実習生の72%で、留学生は半分以下の32%だった。

 東京都新宿区のネパール人男性(24)は専門学校に留学していた昨年七月に特定技能の試験に合格したが、特定技能ではなく、「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の就労ビザを取得。十月に全国に百軒以上あるホテルグループに就職した。

 特定技能を選ばなかった理由は「四年、五年と日本で頑張って勉強しても、五年働いたら帰らないといけない。家族を連れてくることもできない。できれば永住したい」と明かす。「特定技能は長くても一年ずつしかビザがもらえないけど、技人国は三年とか五年のビザがもらえる可能性がある」と期待する。

 日本との経済連携協定(EPA)に基づく資格で介護の仕事をしているベトナム人女性(27)=栃木県=も「五年しかいられない。(特定技能は)日本語のレベルが低くても来られるので、給料が低いとか、いろいろな問題が起こる可能性がある」と否定的だ。

 一方、技能実習生としてパン工場で働くインドネシア人女性(19)=茨城県常総市=は「月十五万円の収入があり、満足している」としながらも、特定技能について「もっと給料がいいから」と興味を示した。

 いずれも技能実習生で、金属加工の仕事をしているベトナム人男性(23)=栃木県鹿沼市=も「待遇がもっといいと思うから」、弁当工場で働くベトナム人男性(21)=千葉市=も「もう少し高い給料がもらえるかもしれない」と特定技能への移行を希望した。

 特定技能は人手不足解消に向け急ピッチで新設したが、送り出し国で準備が十分に進んでおらず、申請書類の多さも障壁となっている。

 日本人と同程度の賃金のほか、ビザ申請、登録支援機関への委託料などで、雇用する側にとって「割高」とも指摘される。

 分析に協力した東京工業大の佐藤由利子准教授(留学生政策)は「留学生にとっては、他の就労資格に比べて、五年という期限のある特定技能の魅力が低い。技能実習生には、日本に残る選択肢が他にない人が多いからだ」とみている。

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技能実習の過ち 繰り返すな

斉藤善久・神戸大大学院准教授(アジア労働法)の話

 従来ある外国人技能実習制度は、原則として転職が認められず、移民政策ではないとする政府の立場もあって在留期間が厳しく制限され、家族の帯同も許されないことが、人権侵害的であるとして国内外から批判されてきた。

 これに対し政府は、新設した特定技能制度は転職を認め、1号より高い能力が条件となる2号に移行すれば、家族の帯同や永住権の取得にも道を開くとアピールしてきた。しかし、政府の答弁や法務省令などで、2号の適用対象が建設と造船分野に限定された上、当面は適用見送りとなった。

 また政府は、特定技能では転職の自由を保障するとするが、自由に転職できるわけでもない。自己都合退職は転職支援の対象外とされ、賃金不払いや過重労働、セクハラ・パワハラに遭っても受け入れ企業の真摯な支援は期待できない。建設業や食品産業などでは引き抜き行為の禁止が申し合わされている。

 途上国の労働者が母国やわが国の双方で人材ビジネスの食い物にされ、使い捨ての労働力として消費されてきた外国人技能実習制度の二の舞いとならないよう、抜本的な制度の見直しが必要だ。

 

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