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【政治】

「隠蔽ない」根拠薄弱 定義厳格化で認定回避 統計不正 再調査報告

 「毎月勤労統計」の不正を検証してきた厚生労働省の特別監察委員会が二十七日に公表した再調査報告書は、一月に発表した前回の報告書と同様に、組織的隠蔽(いんぺい)は認められないと結論づけたが、根拠の薄弱さが際立つ。組織的隠蔽の定義をことさら厳しくし、隠蔽の認定を避けた印象も。国民目線とかけ離れた内容との批判は避けられない。 (大野暢子、木谷孝洋)

 ▼手心

 「厚労省に手心を加える気持ちは一切ない」

 監察委の樋口美雄(よしお)委員長は二十七日の記者会見で、こう強調した。

 今回の報告書は、従業員五百人以上の事業所をすべて調査するルールに反し、東京都でひそかに抽出調査を行ってきたにもかかわらず、厚労省職員が二〇一五〜一六年、全国で全数調査をしていると有識者や総務省に伝えた行為を新たに「虚偽」と認定した。

 しかし、前回の報告書で「不適切」と認定した行為を含めて、隠蔽とは認めずじまい。むしろ、隠蔽ではないという見立てを補強するような、当事者たちの証言を多く書き込んだ。

 一七年十一月ごろ〜一八年一月ごろの間、担当室長から不正を明かされた政策統括官が、修正を指示したまま放置したことについて、「公表すべきである旨」を指示したつもりだったという本人の言葉を引用し、隠蔽の意図を否定。

 一八年一月、全数調査の結果に近づける補正処理をひそかに始めたことについても「正確な統計を公表するため」だったという証言を挙げ、隠蔽とまで認定できないとした。補正処理そのものを「適切」と評価さえしている。

 ▼うのみ

 もう一つ大きな特色は、前回の報告書で触れていなかった「組織的隠蔽」の定義を詳しく、かつ厳格に説明している点だ。

 「組織的」については「厚労相あるいはこれに準ずる地位にある者」が「違法行為等を認識」した上で「実行の意思決定」をした場合などと規定。今回の場合、次官や審議官へのヒアリングから判断して「上層部から指示されたと認めることはできない」とした。

 現場の担当者間で引き継がれているような不正でも、幹部さえ知らなければ組織的でないという理屈は分かりにくい。幹部の証言をうのみにしている印象もぬぐえない。

 「隠蔽」についても、報告書は「法律違反又(また)は極めて不適切な行為」を認識しながら「意図的に隠そうとする行為」と定義した。

 一五年六〜九月の有識者検討会で同省の担当者が、東京都の抽出調査について把握しながら全数調査と説明したことについても、職員らが綿密な打ち合わせを行っていないことから、この定義に照らして「意図的に隠したとまでは言えない」と結論づけている。

 ▼信頼

 樋口氏が理事長を務める厚労省所管の独立行政法人「労働政策研究・研修機構」は、運営に国費が充てられ、同省職員への研修を実施するなど関係が深い。樋口氏は国会に参考人招致された際も、機構理事長として出席したとして、検証に関する答弁を拒んだ。

 特別監察委は前回の報告書をまとめる際、当事者へのヒアリングに厚労省幹部を同席させていたことが判明し、中立性を疑われた。弁護士三人でつくる事務局を新設し、厳正な検証を目指したが、信頼を取り戻せたとは言えない。

◆特別監察委員会の「組織的隠蔽」の定義

【隠蔽】法律違反又は極めて不適切な行為と認識しながら、その事実を意図的に隠そうとする行為

【組織的】団体の長(厚生労働相)、これに準ずる地位にある者が違法行為等を認識した上でその実行の意思決定をし、その意思に従って組織的に違反行為が行われた場合

 

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